増項補正

[作成・更新日:2018.1.10]

● 東京高判平16・4・14 平成15年(行ケ)230
「 請求項を増加させる補正は、原則として、特許法17条の2第4項(以下単に「4項」という。)で補正の目的とし得る事項として規定された「請求項の削除」(1号)、「特許請求の範囲の減縮」(2号)、「誤記の訂正」(3号)、「明りょうでない記載の釈明」(4号)のいずれにも該当しないことは、規定の文言上明らかである。

 

● 知財高判平17・4・25 平成17年(行ケ)10192
「 2号の規定は、・・・一つの請求項を削除して新たな請求項をたてるとか、当該一つの請求項に係る発明を複数の請求項に分割して新たな請求項を追加するというような態様による補正を予定しているものではないというべきである。
 ・・・一つの請求項に記載された発明を複数の請求項に分割して、新たな請求項を追加する態様による補正は、たとえそれが全体として一つの請求項に記載された発明特定事項を限定する趣旨でされたものであるとしても、2号の定める「特許請求の範囲の減縮」には当たらないというべきであり、2号の定める「特許請求の範囲の減縮」は、補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にあることを必要とすると解するのが相当である。
 ・・・もっとも、多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項について、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合のように、補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものであるときに、これを補正に際し独立の請求項とすることにより、請求項の数が増加することになるとしても、それは、実質的に新たな請求項を追加するものとはいえず、実質的には一対一の対応関係にあるということができるから、このような補正まで否定されるものではない。しかし、このような補正と、実質的に請求項の数を増加させる態様による補正とを同一に扱うことができないことはいうまでもない。」

 

● 知財高判平21・8・20 平成20年(行ケ)10432 判時2071号100頁、判タ1357号226頁 「自働装着機事件」
「(旧請求項:【請求項5】Aを特徴とする自動装着機。【請求項7】Bを特徴とする請求項6記載のコンポーネント。新請求項:【請求項5】A’を特徴とする自動装着機。【請求項6】B’を特徴とする請求項5記載の自動装着機。
本件補正に係る新旧請求項の対応関係として検討を要するのは、旧請求項については5及び7、新請求項については5及び6ということになるが、旧請求項の5及び7のいずれも削除されていないこと、その間の旧請求項6が削除されていることにかんがみると、旧請求項5が新請求項5に、旧請求項7が新請求項6に対応する関係にあると認めることができる。・・・本件補正は、その内容からみても、旧請求項6及び8を削除し、旧請求項7を新請求項6に補正したものと解するほかない。・・・本件審決は、その対応関係の理解を誤り、本件補正は旧請求項5(1つの請求項)が新請求項5及び6(2つの請求項)に補正されたもの、いわゆる「増項補正」であるとして、当該補正が補正の目的要件を充足するか否かを検討することなく、これを却下したものであるから、その判断は前提を誤りといわざるを得ない。」

 

● 知財高判平24・3・28 平成23年(行ケ)10226
「 法17条の2第4項2号は、補正前の請求項と補正後の請求項とが、請求項の数の増減はともかく、対応したものとなっていることを前提としているものと解され、構成要件を択一的に記載している補正前の請求項についてその択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合あるいはその反対の場合などのように、請求項の数に増減はあっても、既にされた審査結果を有効に活用できる範囲内で補正が行われたといえるような事情のない限り、補正によって新たな発明に関する請求項を追加することを許容するものではないというべきである。」

 

● 知財高判平27・2・18 平成26年(行ケ)10057 「入金端末事件」
「 特許法17条の2第5項2号の規定振り及びその趣旨に照らすと、同号に該当する補正は、多くの場合、補正前の請求項の発明特定事項を限定して減縮補正することにより、補正前の請求項と補正後の請求項とが一対一の対応関係にあるようなものになることが考えられる。しかし、同号が、補正により、単に形式的に請求項の数が増加することがないという意味を含めて、補正前の請求項と補正後の請求項が一対一の対応関係にあることを定めていると解すべき根拠はない。・・・同号は、かっこ書を含めてその要件を明確に規定しているのであるから、問題となる補正が同号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するといえるためには、それがいわゆる増項補正であるかどうかではなく、①特許請求の範囲の減縮であること、②補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであること、③補正前の当該請求項に記載された発明と補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であること、という要件を満たすことが必要であり、かつそれで十分であるというべきである。