相違点の認定

[作成・更新日:2018.1.10]

● 知財高判平22・10・28 平成22年(行ケ)10064
「 本願補正発明の進歩性の有無を判断するに当たり、審決は、本願補正発明と引用発明との相違点を認定したが、その認定の方法は、著しく適切を欠く。すなわち、審決は、発明の解決課題に係る技術的観点を考慮することなく、相違点を、ことさらに細かく分けて(本件では6個)、認定した上で、それぞれの相違点が、他の先行技術を組み合わせることによって、容易であると判断した。このような判断手法を用いると、本来であれば、進歩性が肯定されるべき発明に対しても、正当に判断されることなく、進歩性が否定される結果を生じることがあり得る。相違点の認定は、発明の技術的課題の解決の観点から、まとまりのある構成を単位として認定されるべきであり、この点を逸脱した審決における相違点の認定手法は、適切を欠く。」

 

● 知財高判平23・9・28 平成22年(行ケ)10351 判時2135号101頁、判タ1400号300頁
「 審決において、特許法29条2項が定める要件の充足性の有無、すなわち、当業者が、先行技術に基づいて、出願に係る発明を容易に想到することができたか否かを判断するに当たっては、客観的であり、かつ判断が適切であったかを事後に検証することが可能な手法でされることが求められる。そのため、通常は、先行技術たる特定の発明(主たる引用発明)から出発して、先行技術たる別の発明等(従たる引用発明ないし文献に記載された周知の技術等)を適用することによって、出願に係る発明の主たる引用発明に対する特徴点(主たる引用発明と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準としてされる例が多い。
 他方、審決が判断の基礎とした出願に係る発明の「特徴点」は、審決が選択、採用した特定の発明(主たる引用発明)と対比して、どのような技術的な相違があるかを検討した結果として導かれるものであって、絶対的なものではない。発明の「特徴点」は、そのような相対的な性質を有するものであるが、発明は、課題を解決するためにされるものであるから、当該発明の「特徴点」を把握するに当たっては、当該発明が目的とした解決課題及び解決方法という観点から、当該発明と主たる引用発明との相違に着目して、的確に把握することは、必要不可欠といえる。」