欧州特許取得の流れ(フロー)

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1.EPC出願制度の概要

・EPCとは、欧州特許条約(European Patent Convention)の略称で、正式名称は、欧州特許の付与に関する条約(Convention on the Grant of European Patents)です。
・EPCは、特許に関する実体的、手続的要件を統一し、出願から特許付与までの手続を欧州特許庁(EPO:European Patent Office)にて一元化することを目的とする条約です。EPC出願は、欧州において特許を得たい国ごとに直接出願を行う代わりに、それを一まとめで行うようにするもので、手続きが簡素化されるため、出願人の労力、費用的な負担が軽減されるというメリットがあります。このメリットは、出願国が多いほど大きくなります。
・付与された特許は、各国で付与される国内特許と同一とみなされるため(2条(2))、その特許の有効性及び侵害については、国ごとで争う必要があります。国内特許の束といわれるゆえんです。
・EPC出願がされたときは、すべての締約国が指定されたものとみなされ(みなし全指定、79条(1))、欧州調査報告の公開の日から6ヶ月以内に定額の指定手数料を支払うことで、すべての締約国を指定したものとして扱われます(79条(2)、規則39(1))。
・特許付与後の各指定国における手続に関し、従来は、クレーム及び明細書を指定国の公用語に翻訳しなければならず、翻訳コストが非常にかかるという問題がありましたが、2008年5月1日発効のロンドンアグリーメント(London Agreement on the application of Article 65 EPC)により、欧州特許庁の公用語(英語、独語、仏語、14条(1))のいずれかを公用語とする英国、独国、仏国といった指定国においては、当該指定国の公用語による明細書の翻訳文の提出は不要となりました。たとえば、EPC出願を英語で出願し、英国、独国及び仏国を指定国とした場合、独語及び仏語による明細書の翻訳文の提出は不要となります。なお、クレームについては、出願の手続言語以外の欧州特許庁の他の2つの公用語に翻訳して提出する必要があります(規則71(3))。
・PCT国際出願の欧州への移行(Euro-PCT出願)もEPC出願と同様です。

2.特許出願/PCT国内移行(Euro-PCT出願)

・出願に際し、明細書、クレーム、図面及び要約が必要となります(78条)。
・日本の場合とクレームドラフティングの実務が異なるところがあります。欧州出願時に修正するようにしてもよいのですが、基礎出願(日本出願)やPCT国際出願において、欧州(や米国、中国といった出願メジャー国)を意識してクレームドラフティングするというのも考え方の一つです。
・従属クレームの従属形式について、米国では、多項制従属クレーム(いわゆる「マルチクレーム」)は認められるものの、追加手数料が必要であり、また、多項制従属クレームに従属する多項制従属クレーム(いわゆる「マルチのマルチクレーム」)は認められませんが、EPCでは、日本と同様、どちらも認められ、追加手数料も必要ありません。ただし、クレーム総数が16以上になると追加手数料が必要となりますので(規則45)、基本的にはクレーム総数を15までにとどめておくことになります。
・EPC出願は日本語でもすることができます(14条(2))。その場合、出願から2ヶ月以内に、欧州特許庁の公用語(英語、独語、仏語、14条(1))のいずれか一の言語による翻訳文を提出する必要があります(14条(2))。この期間内に提出できなかったとしても、通知から2ヶ月以内に提出することができます。
 ただし、Euro-PCT出願には適用されません。Euro-PCT出願の場合、優先日から31ヶ月以内に行わなければならない移行手続において(規則159(1))、翻訳文を提出する必要があり(同(a))、このときに提出できなかったとしても、通知から2ヶ月以内に提出することができます。

3.出願公開

・EPC出願は出願日(又は優先日)から18ヶ月後に公開されます(93条)。
・出願公開は、明細書、クレーム、図面及び要約に加え、欧州調査報告も対象となりますが、欧州調査報告が公開準備前に作成されていない場合は、別個に公開されます(規則68(1))。PCT国際出願と異なり、調査見解書は公開されません(規則62(2))。

4.審査請求

<EPC出願>
・審査請求の期限は、欧州調査報告の公開の日から6ヶ月以内です(規則70(1))。なお、欧州調査報告の公開の日は欧州特許庁から通知されます(規則69(1))。

<Euro-PCT出願>
・審査請求の期限は、PCT国際出願の国際調査報告の公開の日から6ヶ月以内(153条(6))、又は優先日から31ヶ月以内(規則159(1)(f))です。

5.調査、調査報告、調査見解書、応答(意見書/補正書)

<EPC出願>
・出願がされると、欧州特許庁の調査部により先行技術調査(欧州調査)が行われ、欧州調査報告(ESR:European Search Report)が作成されます。欧州調査報告には、調査部が発見した文献が列挙されます(規則61(1))。
・2005年の規則改正により、拡張された欧州調査報告(EESR:Extended European Search Report)が導入されました。拡張欧州調査報告には、EPC出願の特許性に関する見解(EPCに規定する要件を満たしているか否かの見解)が記述された調査見解書(SO:Search Opinion)が添付されます(規則62(1))。
・調査見解書に否定的な見解が示されている場合には、出願人は、欧州調査報告の公開の日から6ヶ月以内(すなわち、審査請求の期限内)に、調査見解書に応答しなければなりません(規則70a(1))。応答は、意見書/補正書を提出して行います。応答しなかった場合には、出願は取り下げられたものとみなされます(規則70a(3))。なお、調査見解書が肯定的なものである場合には、応答する必要はありません。
・出願人が拡張欧州調査報告を受け取る前に審査請求をした場合には、欧州特許庁は、拡張欧州調査報告の公開後、出願人に対し、出願人が出願手続を続行することを希望するか否かの回答を求めます(規則70(2))。これに対し、調査見解書に否定的な見解が示されている場合には、出願人は、通知から6ヶ月以内に、調査見解書に応答しなければなりません(規則70(2))。応答は、意見書/補正書を提出して行います。応答しなかった場合には、出願は取り下げられたものとみなされます(規則70(3))。なお、調査見解書が肯定的なものである場合には、応答する必要はありません。

<Euro-PCT出願(欧州特許庁が国際調査機関(ISA:International Searching Authority)(又は国際予備審査機関(IPEA:International Preliminary Examining Authority))となった場合)>
・EPCへの国内移行後、規則161の通知がされ、国際調査見解書(ISO:International Search Opinion)(又は国際予備審査報告(IPER:International Preliminary Examination Report))に否定的な見解が示されている場合には、出願人は、通知から6ヶ月以内に、国際調査見解書(又は国際予備審査報告)に応答しなければなりません(規則161(1))。応答は、意見書/補正書を提出して行います。応答しなかった場合には、出願は取り下げられたものとみなされます(規則161(1))。なお、国際調査見解書(又は国際予備審査報告)が肯定的なものである場合には、応答する必要はありません。

<Euro-PCT出願(日本特許庁が国際調査機関(又は国際予備審査機関)となった場合)>
・EPCへの国内移行後、欧州特許庁の調査部により、国際調査報告(ISR:International Search Report)に対する補充的な先行技術調査(補充欧州調査)が行われ、補充欧州調査報告(SESR:Supplementary European Search Report)が作成されます(153条(7))。
・2005年の規則改正により、拡張された欧州調査報告(EESR:Extended European Search Report)が導入されました。拡張欧州調査報告には、EPC出願の特許性に関する見解(EPCに規定する要件を満たしているか否かの見解)が記述された調査見解書(SO:Search Opinion)が添付されます(規則62(1))。
・補充欧州調査報告が作成された場合には、欧州特許庁は、拡張欧州調査報告の公開後、出願人に対し、出願人が出願手続を続行することを希望するか否かの回答を求めます(規則70a(2))。これに対し、調査見解書に否定的な見解が示されている場合には、出願人は、通知から6ヶ月以内に、調査見解書に応答しなければなりません(規則70a(2))。応答は、意見書/補正書を提出して行います。応答しなかった場合には、出願は取り下げられたものとみなされます(規則70a(3))。なお、調査見解書が肯定的なものである場合には、応答する必要はありません。

6.実体審査、拒絶理由通知、許可通知

・指定された審査官により、その出願が特許に値するか否か(特許要件があるか否か)が審査されます(94条(1))。審査官は、調査報告で引用された文献等を考慮し、また、出願人が調査見解書に対して応答するために提出した意見書/補正書を考慮して、EPCに定める特許要件があるか否かを審査します。その出願が特許に値しないと審査官が判断する場合、拒絶理由が通知されます(94条(3) 、規則71(1),(2))。一方、その出願が特許に値すると審査官が判断する場合、許可通知が発行されます(規則71(3))。
・拒絶理由通知に対し、出願人は、意見書や補正書を提出して反論することができます(94条(3))。クレームの補正は、出願人が主と考えるもの(主請求)と、主請求が認容されなかった場合の他の選択肢となるもの(副請求)の両方を提出することができます。一般的には、主請求は広いクレームとし、副請求はそれよりも限定されたクレームにします。
・審査官が拒絶理由通知に対する意見書等を判断した結果、拒絶が解消されていないと判断した場合、出願は原則として拒絶となります。日本や米国と異なり、EPC出願では、拒絶理由に最初、最後という区別はありません。

7.審査請求

・審判請求とは、審査官の判断を不服として審判部に対し、その判断の撤回を求め、再検討を請求する手続をいいます(106条(1))。

8.特許料納付、特許査定、特許公報発行

・許可通知を受けると、特許を付与しようとしている正文を承認した上で、特許料を納付し、かつ、クレームについて、出願の手続言語以外の欧州特許庁の他の2つの公用語の翻訳文を提出することで(規則71(3))、特許査定が発行され、特許公報が発行されます。

参考)
・ 欧州特許条約(EPC:European Patent Convention) - 欧州特許付与に関する条約(Convention on the Grant of European Patents)参照仮訳
・ 欧州特許条約(EPC)規則 - 欧州特許付与に関する条約の施行規則(Implementing Regulations to the Convention on the Grant of European Patents)参照仮訳
・ 欧州特許庁審査便覧(Guidelines for Examination in the European Patent Office)