商標法4条1項11号(結合商標)

[作成・更新日:2018.9.20]

 商標法4条1項11号は、商標登録を受けることができないものとして、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を規定しています。
 ここでは、商標法4条1項11号のうち、結合商標の類否が争点となった審決取消訴訟の判決を紹介します(※ 判決は適宜追加更新していきます。)。

<参考>商標審査基準(第4条第1項第11号)

 

● 知財高判30・9・10 平成30年(行ケ)10019 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10019

【判決要旨】
・「UNITED TOKYO」という語は、「結合した東京」、「連合した東京」又は「東京連合」と訳される。その言葉は必ずしも一般的ではないが、東京には、数多くの人が居住し、また、特色、歴史及び文化の異なる多くの地域があることからすると、それらの連合体を観念することができ、「結合した東京」、「連合した東京」又は「東京連合」をそのような意味で理解することも可能である。そうすると、本件商標は、「結合した東京」、「連合した東京」又は「東京連合」という観念上一体のものとして理解されることもあり得る。
・一方、「UNITED」という語は、「結合した、連合した」などの意味を有する形容詞であるから、他の語と一体となって、その語を修飾するために用いられ、単独では意味を取りにくい語である。また、被服又は靴類を指定商品として「UNITED」を含む商標が登録された例は非常に多いことから、ファッション業界においては、「UNITED」という語はありふれている。さらに、「UNITED」が原告の商品又は営業を示すものとして周知であるといった事情もない。
・したがって、本件商標は、一連一体のものとして理解されるというべきであり、「UNITED」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか、「TOKYO」の部分から出所識別標識としての称呼、観念を生じないなどということはできないから、引用商標との類否の判断において、「UNITED TOKYO」から「UNITED」の部分を抽出して、同部分と引用商標とを比較することは相当でない。
・そうすると、本件商標は、「UNITED TOKYO」の欧文字を同じ大きさで横書きにしてなるのに対し、引用商標1は、「UNITED」の欧文字及び「ユナイテッド」の片仮名を上下二段に同じ大きさで横書きしてなり、引用商標2は、「UNITED」の欧文字を同じ大きさで横書きしてなるものであるから、本件商標は、引用商標1及び引用商標2のいずれとも、外観が明らかに相違する。
・また、本件商標からは、「ユナイテッドトーキョー」の称呼が生じるのに対し、引用商標1及び引用商標2からは、「ユナイテッド」の称呼が生じるから、本件商標は、引用商標1及び引用商標2のいずれとも、称呼が相違する。
・さらに、本件商標からは、「結合した東京」、「連合した東京」又は「東京連合」という観念が生じるのに対し、引用商標1及び引用商標2からは、「結合した」との観念が生じるから、本件商標は、引用商標1及び引用商標2のいずれとも、観念が相違する。
・よって、本件商標と引用商標とは類似しない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平30・8・29 平成30年(行ケ)10026 2部 取消決定→請求棄却

平成30年(行ケ)10026

【判決要旨】
・引用商標は、本件商標登録の出願及び査定の時点において、日本国内において、スニーカーを中心とした履物の分野で、一般消費者の間で周知となっていた。
・そして、引用商標と同様、本件商標の語頭にある「VANS」も指定商品「履物」との関係では強い識別力を持つ。他方、本件商標の残りの部分である「NEAKER」はそれ自体としては何の意味もない語であるところ、そこに直前に置かれた「S」を足した「SNEAKER」は、指定商品である履物の一種であるスニーカーを表示する語として、我が国においても広く知られていること、二つの語を結合するときに、一方の語の末尾と他方の語の語頭とで共通する文字を敢えて省略して商品名等をネーミングする手法が見られることから、「NEAKER」は、直前に「S」を足して、「SNEAKER」と認識される可能性が高い。そして、「SNEAKER」の語は、指定商品である履物の一種を表す語として、指定商品との関係では、識別力を有さないから、「NEAKER」の部分は、指定商品との関係での識別力は、周知で識別力の強い「VANS」と比して明らかに弱い。したがって、本件商標からその要部として「VANS」の部分を抽出して、類否判断することが許される。
・そうすると、本件商標の要部と引用商標は、外観、称呼及び観念を共通にし、本件商標がその指定商品である「履物」に使用された場合、引用商標と出所混同のおそれがあるから、本件商標と引用商標は類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平30・8・29 平成30年(行ケ)10014 2部 拒絶審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10014

【判決要旨】
・引用商標文字部分は、引用商標図形部分とは重なっていないから、引用商標図形部分とは明確に区別することができ、また、十分に目立つものである。そして、引用商標文字部分からは「テンリュー」との称呼と「天の竜(龍)」との観念が生じる。一方、引用商標図形部分は、抽象的な図形であり、特定の称呼や観念は生じないし、引用商標文字部分と一体となって特別な意味を有することになるなど、引用商標文字部分と何らかの関連性を有しているともいえない。したがって、引用商標3のうち引用商標文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別機能として強く支配的な印象を与えるから、引用商標文字部分を要部として分離観察をすることができる。
・そうすると、本願商標及び引用商標文字部分は、いずれも「TENRYU」の欧文字からなり、「テンリュー」との称呼と「天の竜(龍)」の観念を生じることから、本願商標と引用商標3は、類似する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平30・6・21 平成30年(行ケ)10001,2 3部 拒絶審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10001,2

【判決要旨】
・引用商標Aの「ありがとう」の文字部分は、図形の内部に記載されているものの、外観上、招き猫の図形部分と一見して明確に区別して認識できる。そして、「ありがとう」の語は、平仮名5文字からなる極めて平易なものであって、称呼しやすく、感謝の意を表す際に日常的に多用される馴染みのある言葉であることを考え合わせると、「ありがとう」の文字部分は、引用商標Aを見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を強く引くものである。これに対し、招き猫の図形部分と「ありがとう」の語とが、観念的に密接な関連性を有しているとは考え難いし、一連一体となった何かしらの称呼が生じるともいえない。また、招き猫の図形部分及び「ありがとう」の文字部分は、指定役務との関係で、当該役務の質等を表すものともいえない。これらの事情を総合すると、招き猫の図形部分と「ありがとう」の文字部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していないから、当該図形部分と当該文字部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有する要部である。
・そうすると、本願商標と、引用商標Aの要部である「ありがとう」の文字部分とは、外観上、書体の相違以外は同一であり、さらに、称呼上も観念上も同一であるから、本願商標と引用商標Aとは、出所について誤認混合を生ずるおそれがあり、両商標は類似する。
・引用商標Bの「ありがとう!」の文字部分は、外観上、その余の部分と一見して明確に区別して認識できる。また、「ありがとう!」の文字部分は、平仮名5文字の末尾に感嘆符を組み合わせた極めて平易なものであって、当該文字部分中の「ありがとう」の語は、称呼しやすく、感謝の意を表す際に日常的に多用される馴染みのある言葉である。さらに、この語の末尾に感嘆符が付されていることを考え合わせると、「ありがとう!」の文字部分は、引用商標Bを見る者に強い印象を与えるとともに、その注意を強く引くものである。これに対し、引用商標B中に記載されている全ての文字部分と新幹線車両の図形を全体として観察すると、観念上、「東海道新幹線が開業50周年を迎えたことに対し感謝の意を表する」といった程度の理解が可能であるものの、「ありがとう!」の文字部分とその余の部分とが、常に一体として把握しなければならないほどに観念的に強固に結びついたものであるとまではいい難い。また、引用商標B全体からは、「アリガトウフィフティースアニバーサリートウカイドウシンカンセンカイギョウゴジュッシュウネン」の称呼が生じるが、明らかに一気に称呼するには余りにも冗長である。さらに、「ありがとう!」の文字部分及びその余の部分は、指定役務との関係で、当該役務の質等を表すものともいえない。これらの事情を総合すると、引用商標Bを構成する「ありがとう!」の文字部分とその余の部分とが、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していないから、当該文字部分とその余の部分は、それぞれが独立して出所識別機能を有する要部である。
・そうすると、本願商標と、引用商標Bの要部である「ありがとう!」の文字部分とは、外観上、感嘆符の有無及び書体の相違以外は同一であり、さらに、称呼上も観念上も同一であるから、本願商標と引用商標Bとは、出所について誤認混合を生ずるおそれがあり、両商標は類似する。

【キーワード】結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平30・4・26 平成29年(行ケ)10217 3部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10217

【判決要旨】
・「咲蔵」の文字は、それ自体造語である上に、「花が咲く」ことを意味する「咲」の文字と「蔵」の文字との組合せからは、「花が咲く蔵」といった華やか(にぎやか)なイメージが想起され、さらに、その音(振り仮名により「サクラ」の称呼が生じる。)を踏まえれば、「桜の花」をも連想させるといい得るところ、いずれも本願商標の指定役務との関係において役務の質等を想起させるものではないこと、他の構成要素と比較して明らかに太く、力強い文字で中央に大きく配置されていることからすると、それ自体、出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分である。
・そうすると、本願商標からは、「鉄板串焼き咲蔵(さくら)」という当該商標の全体に対応した称呼及び観念とは別に、「咲蔵(さくら)」の部分に対応した称呼及び観念も生じるところ、本願商標と引用商標とは、外観全体において相違するものの、本願商標の要部に当たる「咲蔵」という文字部分は、構成文字が全く同一であって、外観上類似し、称呼及び観念をも同一にするものであるから、両商標は、外観(書体)の相違を踏まえても、なお、同一又は類似の役務に使用された場合には、当該役務の出所について混同が生じるおそれがある類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平30・4・24 平成29年(行ケ)10220 3部 無効不成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10220

【判決要旨】
・本件商標は、やや冗長であることは否定できないが、外観上、特定の文字部分のみに注意を引かれるような顕著な特徴は有しておらず、また、「四神」及び「宝相華紋」は、一般に親しまれている語とはいえず、そして、「報恩座」の語は造語であるとはいえ、本件指定商品の取引者・需要者において、周知・著名なものとして認識されているとか、商品の出所を示すものとの認識が定着しているとはいえないから、外観上も観念上も、本件商標を構成する各語の区切りそれ自体を明確に認識することは困難である。また、本件商標の「シジンホウソウゲモンホウオンザ」又は「シシンホウソウゲモンホウオンザ」との称呼は、やや冗長な感は否めないものの、無理なく一気に称呼することが一応可能であり、むしろ、この点においても各語の区切りを認識することは困難である。したがって、本件商標に接した取引者・需要者は、これを全体として新たに作られた言葉、すなわち一種の造語と理解、認識するというべきである。本件商標については、そもそも結合商標といえるかどうかにも疑問であるし、仮に結合商標といえるとしても、これを構成する各語を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しており、また、構成部分の一部「報恩座」が取引者・需要者に対し商品等の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるとか、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼等が生じないとはいえないから、本件商標から、「報恩座」の文字部分のみを抽出して対比することはできない。
・本件指定商品は、価格の幅も大きく、高価なものについては、百貨店や家具店において販売員が個別に説明をしながら販売されることもあるが、低価格帯のものを中心に、量販店やインターネット通信販売等で販売されるのが通常であるところ、その需要者は、特別な専門知識や経験を持たず、かつ、関心を有する分野も様々である一般消費者であるから、購入の際に払われる注意力はさほど高くない。また、取引者においては、同種の他の商品も並行して大量に取引をするのが通常であるから、混同が生じないよう、取引時には商品名そのものを省略することなく使用することが多いと推測されるものの、この点についても具体的な取引の実情を認めるに足りる証拠はない。
・よって、本件商標と引用商標とは、外観上も称呼上も大きく相違し、取引の実情を考慮すると、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはなく、本件商標は、引用商標に類似する商標であるといえない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情、外観非類似、称呼非類似

 

● 知財高判平30・4・11 平成29年(行ケ)10208 4部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10208

【判決要旨】
・本願商標の「マイナンバー」の構成部分は、著名な標章である「マイナンバー」とその構成文字を同じくするから、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。他方、本願商標の「実務検定」の構成部分は、指定役務との関係では、「実務」の「検定」であることを一般的に表示するものにすぎず、当該構成部分から役務の出所識別標識としての称呼、観念は生じない。したがって、本願商標のうち、「マイナンバー」という構成部分を抽出し、当該構成部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許される。
・そうすると、本願商標のうち、出所識別標識として強く支配的な印象を与える「マイナンバー」の構成部分と、引用商標の「マイナンバー」とは、称呼及び観念がいずれも同一であるから、本願商標と引用商標は、その外観において同一又は類似といえないとしても、本願商標と引用商標が本件指定役務に使用された場合に、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、類似する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平30・3・29 平成29年(行ケ)10211 1部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10211

【判決要旨】
・本願商標の左側の図形は、三角形の形状であるから、アルファベットの「A」が想起され、「A」がデザイン部分1のような構成にデザイン化されて表される事例が多数あることを考慮すると、「A」をデザイン化して表したものと容易に理解し、認識されるところ、本願商標は、「AMG」をデザイン化して表したものである。
・引用商標の構成中、図形部分1は、左から右に向けて徐々に細くなる5本の斜線であるのに対し、図形部分2ないし4は、アルファベットの「AMG」をデザイン化して表したものであり、図形部分1とその他の部分は、外観上まとまりよく一体に表現されておらず、また、図形部分1は、その形状に照らし、出所識別標識としての称呼、観念が明確には生じないのに対し、図形部分2ないし4は、「AMG」を想起させるものであり、引用商標に接した取引者、需要者は、図形部分2ないし4に強く印象付けられ、これを役務の出所識別標識として認識することから、引用商標の構成中、図形部分1と、図形部分2ないし4を分離して、観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しておらず、図形部分2ないし4が着目される。
・本願指定商品と引用指定商品は、さほど高価とはいえないものを含む日常的に消費される性質の商品であり、その取引者、需要者は、特定の専門的事業者のみに限定されず、本願商標を本願指定商品に使用した場合、取引に当たって、その商標の細部の違いについて十分な注意を払うものとはいえず、本願指定商品については、引用商標と同一営業主の製造販売に係る商品と誤認され、商品の出所について誤認混同を生じるおそれが否定し難いことから、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、取引の実情をも考慮すると、外観をさほど重視することはできない。
・そうすると、本願商標と引用商標の図形部分2ないし4とは、称呼において同一であり、両者からは特定の観念を生じるものではなく、観念上、区別することができないから、本願指定商品の需要者にとって、引用商標と同一の称呼を生じる本願商標を付した商品を、引用商標を付した商品と誤認混同するおそれがあり、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情

 

● 知財高判平30・3・7 平成29年(行ケ)10169 2部 一部無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10169

【判決要旨】
・本件商標は、8字8音とやや冗長であること、「コ」の字がやや大きいこと、「ゲンコツ」も「コロッケ」も一般に広く知られていることから、「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しておらず、また、本件商標の構成のうち「コロッケ」の部分は、指定商品の原材料を意味するものと捉えられ、識別力がかなり低いのに対し、「ゲンコツ」は、食品分野において、ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあるものの、「コロッケ」よりも識別力が高く、需要者に対して強く支配的な印象を与えることから、本件商標の要部は「ゲンコツ」の部分である。
・そうすると、本件商標の要部「ゲンコツ」と引用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、観念を共通にするから、両者は、類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平30・2・20 平成29年(行ケ)10168 1部 無効成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10168

【判決要旨】
・本件商標の構成中、「RAMEN」の文字部分は、「味噌屋」及び「MiSOYA」の文字部分と、外観上まとまりよく一体に表現されておらず、また、本件指定役務との関係においては、役務の質を表すものであるから、自他役務の識別標識としての機能を有しないか、又は、極めて弱いものであり、さらに、「MiSOYA」の文字と比較してかなり小さく表記され、注目されにくいことも考慮すると、出所識別標識としての称呼、観念が明確には生じない。これに対し、「MiSOYA」の文字が、最も注目されやすい書体で目立つ位置に付されているのであるから、本件商標に接した取引者、需要者は、「味噌屋」及び「みそや」の文字と相まって、その称呼をローマ字で表記したと理解される「MiSOYA」の文字に強く印象付けられ、これを役務の出所識別標識として認識する。したがって、本件商標の構成中、上部の「RAMEN」の文字部分と、「味噌屋」及び「MiSOYA」等の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえない。
・引用商標2も同様で、「ら~めん工房」の文字部分は、出所識別標識としての称呼、観念が明確には生じないのに対し、「味噌屋」の文字部分は、指定役務との関係において、直ちに、具体的な役務の質や提供の用に供する物を表すものではなく、相応の自他識別力を有し、したがって、引用商標2の構成中、「ら~めん工房」の文字部分と、「味噌屋」の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえない。
・本件指定役務及び引用商標の指定役務は、さほど高価とはいえないものを含む日常的に消費される性質の商品(飲食物)の提供であり、その需要者は、高度の注意力をもって役務の提供を受けるとは限らないから、本件指定役務については、引用商標と同一営業主の提供に係る役務と誤認され、役務の出所について誤認混同を生じるおそれが否定し難く、また、本件指定役務は引用商標の指定役務を包含する役務であり、その取引者、需要者には、広く一般の消費者が含まれるから、役務の同一性を識別するに際して、その名称、称呼の果たす役割は大きく、重要な要素となるところ、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、取引の実情をも考慮すると、外観をさほど重視することはできず、外観及び観念に比して、称呼を重視すべきである。
・そうすると、本件商標と引用商標は、「ミソヤ」の称呼において同一であり、両商標からは「味噌を売る店」、味噌味の飲食物を提供する店等の同一又は類似の観念を生じるから、本件指定役務の需要者にとって、引用商標と同一の称呼を生じる本件商標を付した役務を、引用商標を付した役務と誤認混同するおそれがある。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情

 

● 知財高判平30・1・25 平成29年(行ケ)10154 3部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10154

【判決要旨】
・本願商標において、「OSAKA」及び「DANISH BREAD」の文字部分は、指定商品との関係では、商品の産地、商品の普通名称を想起させるものであり、また、麦の穂のような図形は、指定商品との関係では、商品の原材料を想起させるものであり、さらに、水平の直線部分は、極めて単純な形態であることから、これらは、商品の出所識別標識としての機能を果たさない。これに対し、「雅」及び「MIYABI」の文字部分は、指定商品の品質等を直接表示するものではなく、また、「雅」の文字部分は他の構成要素と比較して一際大きく力強い筆跡で表示され、「MIYABI」の文字部分も他のローマ字より大きく目立つ態様で表示されていることから、「雅」及び「MIYABI」の文字部分は、両者相まって、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができ、当該文字部分だけを要部として抽出し、引用商標と比較して商標の類否を判断することも許される。
・引用商標も同様で、「MIYABI」及び「みやび」の文字部分は、両者相まって、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができ、当該文字部分だけを要部として抽出し、本願商標と比較して商標の類否を判断することも許される。
・そうすると、本願商標と引用商標の要部について対比すると、称呼(ミヤビ)及び観念(優美で上品なこと)は完全に同一であり、また、外観についても、文字種の違いは、両商標の類否を判断する上でさしたる相違ではなく、むしろ、一番大きく表示されていて見る者の目を惹く部分である本願商標の「雅」の文字部分と引用商標の「MIYABI」の文字部分が共に似たような筆文字風の書体で表示されており、この点は、離隔的観察を前提とすれば、取引者、需要者に対し近似する印象を与えるということもでき、さらに、指定商品が共通する「食パン」は、パン屋等で販売される日用の食品であって、通常はそれほど注意深く商品を観察した上で購入したり取引されたりするものではないことから、これらを総合考慮すれば、本願商標と引用商標とは互いに出所について誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、隔離観察、取引の実情

 

● 知財高判平29・8・8 平成29年(行ケ)10034 2部 拒絶審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10034

【判決要旨】
・本願図形は、人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したものと認識されるものであり、本願商標中の主要部を構成上占めているのに対し、文字部分は、ありふれた筆記体で書されている上、図形部分に比してかなり小さく表示されており、また、本願図形と文字部分はわずかに重なるが、本願商標からはその図形部分の円輪郭線を明確に認識することができる。したがって、本願商標は、本願図形を分離、抽出して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しておらず、本願商標の構成中、視覚上、最も強く印象に残るのは、本願図形であるということができるから、本願商標と引用商標との類否判断に際して、本願図形を要部として取り出すことができる。
・引用商標2において、図形部分と文字部分は間隔を置いて配置されていることから、視覚上分離して認識されるものであり、また、文字部分は「地球を愛する」程度の意味合いを認識させるものの、それ自体が図形部分と直接的な観念上のつながりはないから、引用商標2は、図形部分と文字部分とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しておらず、本願商標と引用商標2との類否判断に際して、視覚上、最も強く印象に残る図形部分を要部として取り出すことができる。
・そうすると、本願図形と、引用商標1~3の図形部分を比較すると、円形の顔に目と口を有する人の笑顔を、簡潔かつ、象徴的に描写したものと看取される点において外観的な印象を共通にするから、細部において相違する点はあるものの、本願商標と引用商標1~3は、類似する。
・原告は、本願図形は、長年にわたって描かれ続けている単なる図形であり、引用商標4は、引用商標1~3が存在するにもかかわらず、登録されていることから、本願商標の要部は、「HARVEY BALL」であると主張するが、上記のとおり、本願図形は十分な識別力を有するから、引用商標4が登録されていることは、上記判断を左右するものではない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平29・7・27 平成29年(行ケ)10030 2部 無効成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10030

【判決要旨】
・本件商標の「ORGANO」及び「SCIENCE」は、間に間隔があり、外観上分離して看取することができる上、「オルガノサイエンス」の称呼は、やや冗長であり、また、「ORGANO」の文字部分は、単独の言葉として用いられている事実はなく、我が国においてその意味が広く知られるに至っているものでもなく、さらに、「オルガノ」及び「ORGANO」が被告の略称又はハウスマークとして周知、著名であったことから、「ORGANO」は、被告の略称又はハウスマークを示す標記としての印象が強い。他方、「SCIENCE」の文字部分は、「科学」を意味する英単語として、社会に広く浸透した一般的な用語であって、その指定商品・指定役務に照らしても、さほど強い識別機能を有しない。したがって、「ORGANO」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であるから、本件商標については、この部分を抽出して引用商標と比較して類否判断をすることが相当である。
・そうすると、本件商標の要部と引用商標1,2を比較すると、前記のとおり、我が国において一般的に知られた言葉でないため、特定の観念は生じないことから、観念においては比較することはできないものの、引用商標1,2は、本件商標と「オルガノ」という呼称において一致し、引用商標1については、更に本件商標とは外観においても類似しているということができるので、本件商標と引用商標1,2は、類似する商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平29・7・27 平成28年(行ケ)10275 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10275

【判決要旨】
・下記平成28年(行ケ)10192と同種の判断

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平29・7・19 平成28年(行ケ)10272 1部 無効不成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10272

【判決要旨】
・「極肉」という文字部分は、「.com」という文字部分の前に位置することから、取引者又は需要者は、これをドメイン名を表示する一体のものとして理解し、しかも、「極」は「肉」を修飾する形容詞であるから、「極肉」という文字自体、文法構造上分離するのは相当ではなく、一体のものとして理解するのが自然であることに加え、「極肉」という文字は、これ自体から特定の定着した観念を生じさせるものではなく、いわば一体となって造語を形成するものであるから、その一部のみが強く支配的な印象を与えるものとはいえない。したがって、本件商標の構成のうち「極」の文字部分を抽出し、この部分だけを引用商標と比較して類否を判断することは許されない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平29・6・29 平成28年(行ケ)10206 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10206

【判決要旨】
・下記平成28年(行ケ)10192と同種の判断

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平29・6・28 平成28年(行ケ)10270 3部 拒絶審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10270

【判決要旨】
・本願商標の前半を構成する「SeaGull」と後半を構成する「LC」の各欧文字部分は、記号「-」(ハイフン)を介して視覚上明確に分離して観察されるとともに、「SeaGull」の欧文字部分は、一般に、「海カモメ」の意味を有し、当該部分につき、本願商標の指定商品「業務用電子計算機用プログラム」との関係で、その商品の普通名称や品質等を表示するものであるなど、商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないと見るべき事情は見当たらないから、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、他方、「LC」の欧文字部分は、取引者、需要者にとって、独立の意味を持つものではなく、商品の規格、型式又は種別等を表示する記号又は符号として認識されるものと見るのが相当であるから、当該部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じない。したがって、本願商標については、その構成部分の一部である「SeaGull」の欧文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
・そうすると、本願商標と引用商標とは、その称呼及び観念を共通にし、外観については、小文字とするか大文字とするかの違いはあるものの、近似した印象を与える類似したものであり、同一又は類似の商品に使用された場合に、その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがある類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平29・4・24 平成28年(行ケ)10192 3部 無効不成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10192

【判決要旨】
・本件商標と引用商標1,3は、「一般社団法人」のほか、「ISD」及び「協会」の部分で外観が相違する。
・本件商標は、外観視覚上まとまりよく一体に表されているものであるから、その構成全体から「イッパンシャダンホウジンアイエスディーコセイシンリガクキョウカイ」との称呼が生じるほか、法人の種別を表す「一般社団法人」の部分を省略して「アイエスディーコセイシンリガクキョウカイ」との称呼が生じ得るところ、本件商標と引用商標1,3は、称呼においても相違する。
・「ISD」は造語であってそれ自体特定の観念を生じるものではなく、「個性心理学」は心理学という学問の一分野(一領域)を示す一般的名称(普通名称)にすぎず、「協会」は「ある目的のため会員が協力して設立・維持する会」であって団体の一種であることからすると、本件商標からは、「(一般社団法人である)『ISD』という名称の心理学の一分野(一領域)である個性心理学に関する会員相互の協力団体」という観念が生じるのに対し、引用商標1からは、「心理学の一分野(一領域)である個性心理学」との観念、引用商標3からは、「心理学の一分野(一領域)である個性心理学を扱う研究機関」との観念が生じるものであって、本件商標と引用商標1,3は、観念においても明らかに相違する。
・よって、本件商標は引用商標1,3と類似していない。
・上記のとおり、「個性心理学」なる語が原告の業務を表示するものとして周知ではなく、同部分の識別力が強いものではないため、本件商標と引用商標1,3との類似性はない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平29・3・23 平成28年(行ケ)10208 2部 拒絶審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10208

【判決要旨】
・「SYSTEM」の語は、商品の品質又は役務の質を表したものとして、出所識別表示としての機能がないか又は極めて弱い。一方、「TOMATO」の語からは、まず、野菜のトマトが想起されるが、野菜のトマトと、本願指定商品の品質等又は本願指定役務の質等との関連を想定できないから、本願商標においては、「TOMATO」の欧文字部分が、取引者又は需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として、強く支配的な印象を与える。したがって、本願商標の要部は「TOMATO」の部分であり、これを要部として分離抽出できる。
・そうすると、本願商標と引用商標1は、「トマト」の称呼と観念を共通にし、外観において共通する部分がある類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平29・1・24 平成28年(行ケ)10164 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10164

【判決要旨】
・本件商標と引用商標は、「メンチ」の文字の有無という相違があり、外観において相違する。
・本件商標は、「ゲンコツメンチ」の称呼を生じるのに対し、引用商標は、「ゲンコツ」の称呼を生じるから、称呼において相違する。
・本件商標は、「にぎりこぶしのような大きさで、丸みと厚みがある形状の、挽肉を原材料とした加工食品」という観念を生じ得るのに対し、引用商標は、「にぎりこぶし」という観念を生じるのであって、観念において相違する。
・本件商標は、「ゲンコツ」の文字部分と「メンチ」の文字部分の組合せであるが、一連に横書きされて一体的に表記されている。また、本件商標の称呼は、リズム感があることから、全体として、簡潔で歯切れのいい印象を与える。そのため、本件商標において、「ゲンコツ」の文字部分だけが商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。
・よって、本件商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、引用商標と相違し、取引の実情を考慮しても、引用商標とは類似していない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似、取引の実情

 

● 知財高判平28・12・22 平成28年(行ケ)10145 1部 無効成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10145

【判決要旨】
・本件商標の「ケアセンター」という構成部分は、指定役務との関係においては介護の提供場所を一般的に表示するものにすぎず、役務の出所識別標識としての称呼、観念は生じない。他方、本件商標の「くれない」という構成部分は、「ケアセンター」と用語として関連するものではなく、指定役務の内容等を具体的に表すものではないから、指定役務との関係では、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。したがって、本件商標のうち「くれない」という構成部分を抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することが許される。
・そうすると、本件商標の構成部分である「くれない」と引用商標の「くれない」は、その外観、観念及び称呼がいずれも同一であり、介護に係るサービス等において使用されるという実情も踏まえると、本件商標と引用商標は類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情

 

● 知財高判平28・10・27 平成28年(行ケ)10090 3部 取消決定→請求棄却

平成28年(行ケ)10090

【判決要旨】
・本件商標において、「Dr.Coo」の文字と「AQUA COLLAGEN GEL」の文字とは、上下二段に分けて表記されている上、前者の文字が後者よりやや大きいこと、前者が大文字と小文字の組合せであるのに対し、後者は大文字のみからなること、両者の文字数の違いにより、両者の文字列全体の幅が大きく異なることといった相違があることからすると、両者は、外観上明瞭に区別して認識される。
・「Dr.Coo」の文字と「AQUA COLLAGEN GEL」の文字とは、観念の点においても特段の結びつきがあるものではなく、明瞭に区別して認識される。
・引用商標1及びその構成中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分は、全国のスキンケア化粧品やドクターズコスメの取引者、需要者らの間において、そのようなものとして広く認識されている事実からすれば、本件商標の下段の「AQUA COLLAGEN GEL」の部分に特に注目することは自然にあり得る。
・したがって、本件商標においては、「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が商品の識別標識として強く支配的な印象を与える部分として認識されることがあるから、当該部分を本件商標の要部として把握することが可能である。
・引用商標1においても、下段の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分を要部として把握することが可能である。
・そうすると、本件商標と引用商標1及び2とは、商標全体の外観においては異なるものの、そこから生ずる称呼及び観念を共通にする商標であり、取引者、需要者にとって、互いに紛らわしく、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、類似する商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平28・9・21 平成28年(行ケ)10077 2部 無効成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10077

【判決要旨】
・白無地の帆の部分は文字の背景、帆の周囲の部分は文字のレイアウト枠として機能させているものと理解され、帆の上に配された文字部分が図形部分とは分離して観察される。
・文字部分についてみると、「サクラサケ」と「ひらけごま」は、書体、色彩を異にするほか、「ひらけごま」の文字の大きさが「サクラサケ」の文字のおおむね倍程度になるなど、両者に顕著に差異が設けられており、「サクラサケ」と「ひらけごま」とが一連一体として称呼及び観念されることはない。
・したがって、本件商標は、文字部分の中で特に目立つように配された「ひらけごま」が看者に強く支配的な印象を与えており、「ひらけごま」が独立して自他商品の識別標識として機能している。
・引用商標1~引用商標3は、いずれも、同一構成を有する商標と理解してよい。そして、一般の取引者、需要者は、上下段のいずれかによって、引用商標を称呼及び観念することから、引用商標は、「ひらけごま!」の部分が独立して自他商品の識別標識として機能しているとみることができる。
・そうすると、本件商標と引用商標とは、それぞれ、「ひらけごま」と「ひらけごま!」の文字部分において外観が近似し、称呼及び観念を共通とするから、類似の商標である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平28・7・20 平成28年(行ケ)10062 4部 拒絶審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10062

【判決要旨】
・本願商標において、「FIT」の文字部分は、その余の構成部分に比して、見る者に格段に強い印象を与え、その注意をより強くひくものであり、他方、「Foxconn Interconnect Technology」の文字部分は、目立たない態様であり、それほど見る者の注意をひくものではない。したがって、「FIT」の文字部分は、取引者、需要者に対し、本願商標の指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、本願商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、本願商標の構成から「FIT」の文字部分を抽出して対比することも許される。
・そうすると、本願商標から生じる「フィット」との称呼及び「適した」との観念は、引用商標の称呼及び観念と同一であるところ、本願商標の「FIT」の文字部分と引用商標とは、外観上、文字の彩色や書体等の相違はあるものの、その相違は、称呼及び観念の同一性をりょうがするほどのものではないから、本願商標と引用商標とは、出所について誤認混同のおそれがあり、類似する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平28・5・18 平成27年(行ケ)10246 4部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10246

【判決要旨】
・「Photomaker」及び「Pro」の各欧文字の部分の頭文字が大文字で表され、各部分の間には半角分のスペースが空けられ、表示態様も異なることから、本願商標は、各部分それぞれについて独立して見る者の注意をひくように構成されている。しかし、「Pro」の部分は、品質等を直接表示するもので、取引者、需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではないから、同部分から出所識別標識としての称呼、観念は生じない。したがって、本願商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、本願商標の構成から「Photomaker」の部分を抽出して対比することも許される。
・そうすると、本願商標の「Photomaker」の部分と引用商標の上段部分からは、「フォトメーカー」との同一の称呼が生じ、「写真を作る人」という同一の観念が生じるところ、本願商標と引用商標との間には、外観において、文字のデフォルメの程度等や、片仮名部分の付加の有無について相違があるとしても、この相違によって、各商標の称呼及び観念の同一性から生じる誤認混同のおそれを否定することはできないから、本願商標と引用商標は、出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、類似する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平28・4・27 平成27年(行ケ)10224 2部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10224

【判決要旨】
・本願商標を本願指定商品である衣服や靴、洋品小物などに使用する場合は、取引者、需要者は、「MILANO」の欧文字を、イタリア国ミラノでデザイン等された商品であることを表す部分、すなわち、各商品の品質を表示した部分と認識するから、本願商標は、「MILANO」の欧文字が、商品の品質を表示した部分として、格別の自他商品識別力を有しないのに対し、「MAGGIE」の欧文字は、固有の名称であって、語頭の「M」の欧文字の左端の縦線をやや長く伸ばして先端を「J」の欧文字のようにやや外側に曲げた特徴を有しており、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、当該欧文字のみを抽出し、他人の商標と比較して商標としての類否を判断することが許される。
・そうすると、外観を比較すると、両商標は、相違するが、称呼を同一にし、「『マギー』という女性の名又は愛称」の観念を同一にするから、本願商標と引用商標とは、類似する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平28・4・13 平成27年(行ケ)10154 2部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10154

【判決要旨】
・引用商標において、「LA」は、フランス語の定冠詞であり、定冠詞は、特段の意味を有せず、これを省略して表記ないし称呼することもあり、自他商品の識別標識としての機能が格別強いということはできない。一方、「CIFONELLI」は、「チフォネリ」と比較的長く称呼され、特定の意味合いを有しない造語と理解される。したがって、本願指定商品の取引者・需要者は、「CIFONELLI」の文字部分を引用商標の主要な部分と認識し、この外観に注目し、これより生ずる称呼をもって取引にあたる場合も少なくない。
・そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観上近似し、称呼を共通にし、また、本願指定商品の需要者は男性であり、一方、引用商標に係る商品の需要者は女性に限られないという事情を考慮すると、類似である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情

 

● 知財高判平28・4・13 平成27年(行ケ)10153 2部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10153

【判決要旨】
・引用商標において、「LA」は、フランス語の定冠詞であり、定冠詞は、特段の意味を有せず、これを省略して表記ないし称呼することもあり、自他商品の識別標識としての機能が格別強いということはできない。一方、「CIFONELLI」は、「チフォネリ」と比較的長く称呼され、特定の意味合いを有しない造語と理解される。したがって、本願指定商品の取引者・需要者は、「CIFONELLI」の文字部分を引用商標の主要な部分と認識し、この外観に注目し、これより生ずる称呼をもって取引にあたる場合も少なくない。
・本願商標は、図形部分と文字部分が不可分一体のものとしてのみ認識され把握されるとはいえない。そのうえで、「Cifonelli」の欧文字部分は、特段の観念を有しない造語であるから、自他商品識別標識としての機能が高いといえる上、最も大きく表記されている。他方、「TAILOR」の文字部分は、本願指定商品である「男性用スーツ」等を仕立てる業態を示したものであり、はさみの図形部分は、その仕立ての際の道具としてその業態を象徴したものであるから、自他商品の識別標識としての機能は、それほど強いものとはいえない。したがって、「Cifonelli」の欧文字部分を分離、抽出し、この部分を他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきであり、該文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといえる。
・そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観上近似し、称呼を共通にし、また、本願指定商品の需要者は男性であり、一方、引用商標に係る商品の需要者は女性に限られないという事情を考慮すると、類似である。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、取引の実情

 

● 知財高判平28・1・28 平成27年(行ケ)10058 3部 無効不成立審決→審決取消

平成27年(行ケ)10058

【判決要旨】
・本件商標は、「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分との間に空白があり、それぞれの文字部分の冒頭の文字が大文字であることから、外観上、それぞれの文字部分を明瞭に区別して認識することができる。また、本件商標の登録査定当時には、「ENOTECA」は、原告及び原告が行うワインの輸入販売等の事業を表示するものとして、日本国内において、取引者、需要者である一般消費者の間に、広く認識され、周知となっていたことから、「Enoteca」の文字部分から、取引者、需要者において、原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」の観念が生じるのに対し、「Italiana」の文字部分から、「イタリアの」という観念を生じ、それぞれの文字部分から別異の観念が生じる。これらに鑑みると、「Enoteca」の文字部分と「Italiana」の文字部分は、それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していない。
・本件商標の指定役務との関係においては、「italiana」の文字部分は、その役務の提供の場所等がイタリアに関連することを示すものと認識されるにとどまる。他方、「Enoteca」の文字部分から、取引者、需要者において、原告の周知の営業表示としての「ENOTECA」の観念が生じることから、本件商標が「ワインの小売又は卸売の業務について行われる顧客に対する便益の提供」の役務及びワインに関連する役務に使用された場合には、「Enoteca」の文字部分は、取引者、需要者に対し、各役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与え、独立して役務の出所識別標識として機能し得る。
・したがって、本件商標から「Enoteca」の文字部分を要部として抽出し、これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
・そうすると、本件商標の要部である「Enoteca」の文字部分と引用商標(引用商標1ないし3)は、外観は、同一とはいえないが、紛らわしいから、類似し、称呼及び観念が同一であり、本件商標及び引用商標が本件商標の指定役務に使用された場合には、その役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるから、本件商標と引用商標はそれぞれ全体として類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性

 

● 知財高判平28・1・28 平成27年(行ケ)10171 3部 拒絶審決→審決取消

平成27年(行ケ)10171

【判決要旨】
・本願商標の上段部分の「エリエール」と下段部分の「i:na」及び「イーナ」は、外観上明瞭に区別して認識されること、「i:na」は、文字が大きく、かつ、太く表記され、視覚上強い印象を与えるものであること、さらには、商品のブランド名を表す商標等を使用した上で、個別の商品を識別するための標章(ペットマーク)を使用することが一般的に行われているとの取引の実情を考慮すると、本願商標の上段部分と下段部分はそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないものであって、その下段部分は、取引者、需要者に対し、相当程度強い印象を与えるものであり、独立して商品の出所識別標識として機能し得る。したがって、本願商標から下段部分を要部として取り出し、これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
・そうすると、本願商標の要部である下段部分と引用商標は、「イーナ」の称呼が生じる点では共通するものの、特定の意味を持たない造語であるために、観念において比較することができない上、外観において明らかに相違し、その相違の程度は顕著であること、さらに、本件審決当時、商標の称呼のみによって取引が行われる実情はなく、かえって、ティッシュペーパー等の商品については、小売店舗において、展示販売され、商品に付された商標の外観を確認し得る態様で販売されることが通常であるとの取引の実情を総合考慮すると、本願商標及び引用商標が本願商標の指定商品と同一又は類似する商品に使用されたとしても、取引者、需要者において、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはないから、本願商標と引用商標とは全体として類似していない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、観念非類似、外観非類似、取引の実情

 

● 知財高判平28・1・20 平成27年(行ケ)10158,9 4部 拒絶審決→審決取消

平成27年(行ケ)10158,9

【判決要旨】
・本願商標1は、各文字の大きさ及び書体は同一で、全体が1行でまとまりよく表されており、本願商標2は、「ROYAL FLAG」の文字部分は、小さく、かつ細い文字で表され、しかも、ゴシック体という一般的な書体であるから、本願商標1,2の外観上、「ROYAL FLAG」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されていない。また、「ROYAL FLAG」という一連の語は、一般的な英単語をつないだものにすぎない。
・他方、「REEBOK」、「Reebok」の文字部分は、原告の商号の略称又はその展開するブランドの名称、あるいは、その業務に係る商品の出所を表示する商標として、本件審決時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されている。
・したがって、「ROYAL FLAG」の文字部分は、それ自体が自他商品を識別する機能が全くないというわけではないものの、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「REEBOK」、「Reebok」の文字部分との対比においては、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないから、本願商標1,2の構成のうち「ROYAL FLAG」の文字部分だけを抽出して、引用商標と比較して類否を判断することは相当ではない。
・本願商標1,2については、全体として一体的に観察し、又は商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える「REEBOK」、「Reebok」の文字部分を抽出して、引用商標との類否を判断するのが相当である。
・そうすると、「REEBOK」、「Reebok」の構成の有無で、両商標は、外観を異にし、また、本願商標1,2からは、「リーボックロイヤルフラッグ」又は「リーボック」との称呼が生じ、「リーボックの展開する「ROYAL FLAG」(王の旗)という商品シリーズ」又は「リーボック」といった観念が生じるのに対し、引用商標からは、「ロイヤルフラッグ」の称呼及び「王の旗」の観念が生じるから、本願商標1,2と引用商標とは、称呼及び観念を異にすることに加え、原告の個々の商品のほぼ全てについて、「REEBOK」、「Reebok」に係る商標が付されているとの取引の実情をも考慮すれば、本願商標1,2と引用商標とが、同一又は類似する商品に使用されたとしても、取引者、需要者において、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれはないから、本願商標1,2は、引用商標に類似しない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、本願商標の周知性、外観非類似、称呼非類似、観念非類似、取引の実情

 

● 知財高判平27・11・19 平成27年(行ケ)10111 4部 拒絶審決→審決取消

平成27年(行ケ)10111

【判決要旨】
・本願商標において、上段の文字部分は、下段の文字部分に比べてかなり大きく、より太い黒線で表わされ、本願商標全体の面積の大半を占めているから、下段の文字部分に比べて相当に目立つ。また、上段の文字部分は、下段の文字部分の各英単語の頭文字である「G」「L」「L」「C」を意味するものとして認識されるが、その外観は、デザイン化された特徴的なものである。したがって、上段の文字部分は、取引者、需要者に対し、本願商標の指定商品及び指定役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、上段の文字部分と下段の文字部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合していない。
・そうすると、本願商標からは、「ジイエルエルシイ」との称呼が生じるのに対し、引用商標1~3からは、「ジイエルシイ」との称呼が生じ、また、本願商標からは、「世界的な生涯学習センター」との観念が生じるのに対し、引用商標1~3の欧文字部分からは、特定の観念が生じず、さらに、本願商標と引用商標1~3とは、その全体の外観構成において相違しており、本願商標の上段の文字部分と引用商標1~3の欧文字部分とを比較してみても、外観上、字数及び文字の綴りが異なるから、本願商標と引用商標1~3は、その外観、称呼及び観念において異なり、類似しない。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平27・9・16 平成27年(行ケ)10079 3部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10079

【判決要旨】
・本願商標の図形部分とその左右に配された文字部分との間には空白があり、図形部分と文字部分とがそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していない。
・そのうえで、「桃」の文字及び「苺」の文字は、同じ大きさ及び同じ手書き風の書体で、左右の対称的な位置にまとまりよく配され、しかも、それぞれが果実を表す漢字として広く親しまれているから、本願商標の文字部分は本願商標に接した取引者、需要者の注意を強く惹きつける部分である。
・他方、本願商標の図形部分は、一見して特定の物の形状を表しているものと認識することは困難であり、それ自体から特定の称呼や観念を生じるものとは直ちに言い難く、出所識別標識としての称呼又は観念は生じない。
・したがって、本願商標の構成中、「桃」及び「苺」の文字部分を要部として取り出し、これと引用商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
・引用商標の上段の「ももいちご」の文字と下段の「百壱五」の文字は、その配置上は不可分的に結合しているとはいえないまでも、「百壱五」の文字は「ももいちご」の平仮名に対する漢字の当て字であると認識されるから、引用商標に接した取引者、需要者においては、両者を一体的なものとして把握する。
・そうすると、本願商標の要部である「桃」及び「苺」の文字部分と引用商標の構成全体は、外観が相違するものの、「モモイチゴ」の称呼が生じる点で共通し、また、「桃と苺」の観念が生じるとともに、本願商標の指定商品の「いちご」に使用される場合には、「桃のような苺」の観念が生じる点で共通し、本願商標及び引用商標が本願商標の指定商品の「いちご」に使用された場合には、その商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるから、本願商標と引用商標とは全体として類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察

 

● 知財高判平27・8・6 平成26年(行ケ)10268 2部 無効不成立審決→審決取消

平成26年(行ケ)10268

【判決要旨】
・本件商標は、「オルガノ」と「サイエンス」の結合商標であるが、9字9音とやや冗長であり、また、「オルガノ」は「サイエンス」に比べれば一般にその意味合いが十分浸透しておらず、さらに、引用商標は、原告の事業を示すものとして相当周知であったことから、本件商標のうち「オルガノ」部分は、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。他方、「サイエンス」は、一般に知られている「科学」を意味し、指定商品である化合物、薬剤類との関係で、出所識別標識としての称呼、観念が生じにくい。したがって、本件商標については、「オルガノ」部分が要部である。
・そうすると、本件商標の要部「オルガノ」と引用商標は、外観において類似し、称呼を共通にし、一般には十分浸透しているとはいえないものの、いずれも「有機の」という観念を有しているから、本件商標と引用商標は類似している。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、引用商標の周知性