商標法4条1項11号(商標の類否)

[作成・更新日:2018.9.20]

 商標法4条1項11号は、商標登録を受けることができないものとして、「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」を規定しています。
 ここでは、商標法4条1項11号のうち、商標の類否が争点となった審決取消訴訟の判決を紹介します(※ 判決は適宜追加更新していきます。)。

<参考>商標審査基準(第4条第1項第11号)

 

● 知財高判平30・9・12 平成30年(行ケ)10040 2部 拒絶審決→請求棄却

平成30年(行ケ)10040

【判決要旨】
・本願商標の図形部分は、左側が縦線、右側が弧線の半楕円形状の輪郭を有し、その内部の相当部分が白抜きとなっている点において、厚みのあるセリフを有する欧文字「D」と共通した形状を有している。欧文字「OGGY」は直ちに特定の意味を有する成語とは認識できないところ、図形部分を欧文字「D」であるとして、本願商標全体をみると、「DOGGY」という構成となる。これが「犬の」という意味を有する英単語であることは、容易に理解される。また、図形部分の内側に白抜きされた絵柄は、「犬」を表したものと容易に理解することができる。したがって、本願商標と引用商標からは、「ドギー」という同一の称呼及び「犬の」という同一の観念が生じる。
・本願商標と引用商標とは、外観において、欧文字「DOGGY」と理解される構成を有する点において共通する。本願商標と引用商標とは、外観において、「D」の図案化の有無や、片仮名部分の付加の有無などが相違するが、その図案化の程度や片仮名部分が欧文字部分の読みを表したものにすぎない。
・よって、両商標を場所と時間を異にして離隔的に観察した場合、両商標の称呼及び観念が同一であり、外観においても共通することから、商品の出所を誤認混同するおそれがあり、本願商標は、引用商標に類似する商標である。

【キーワード】 称呼同一、観念同一、外観類似

 

● 知財高判平30・9・6 平成30年(行ケ)10035 3部 取消決定→請求棄却

平成30年(行ケ)10035

【判決要旨】
・本件商標と引用商標は、書体が異なる点、本件商標の末尾に「.」があるのに引用商標にはこれがない点、引用商標には6文字目に「I」があるが、本件商標にはこれがない点で異なる。他方、本件商標及び引用商標は、「.」「I」を除いては、同じアルファベットを同じ順序で含んで構成される点で近似している。また、いずれの商標も等間隔のアルファベットによりひとかたまりでまとまりよく構成されている。そして、いずれの書体もデザイン化されていない読みやすい普通に用いられる書体であり、看者に強い印象を与えるものではない。さらに、本件商標の「.」は末尾に付され、大きさも小さいこと、引用商標における「I」は6文字目にあって他の文字より幅がかなり狭いことから、これらの相違する文字は、看者の印象に残りにくい。したがって、本件商標と引用商標は、外観において、相紛らわしい。
・「MONTAGNE」はフランス語で山を意味するが、我が国におけるフランス語の履修率は非常に低いところ、本件商品及び引用商標の指定商品の需要者、取引者が一般にフランス語を理解するというべき理由も見当たらないから、当該需要者、取引者を基準にすると、本件商標は特定の観念を想起させない不可分一体の造語として理解される。また、「MONTAIGNE」は「フランスの思想家・作家・モラリストのモンテーニュ(人名)」の意味合いを有するが、当該需要者、取引者が一般にフランス語を理解するとはいえないから、引用商標は特定の観念を想起させない不可分一体の造語として把握される。したがって、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を想起させない。
・当該需要者、取引者が一般にフランス語を理解するとはいえないから、本件商標からは、ローマ字読みにより「モンタグネ」との称呼が生じ、引用商標からは、ローマ字読みにより「モンタイグネ」との称呼が生じる。もっとも、フランス語を理解しない者においても、フランス語の綴りと発音の一般的知識を手掛かりに、本件商標からは、フランス語風に「モンターニュ」との称呼、引用商標からは、フランス語風に「モンテーニュ」との証拠も生じ得る。このうち、「モンタグネ」と「モンタイグネ」は、5音ないし6音のうち、冒頭の3音が共通しており、また、末尾の「グネ」も共通しているし、差異音である「イ」の音は弱音であるから、両称呼を一連に称呼した場合、称呼全体の語調、語感が近似したものとなる。また、「モンターニュ」と「モンテーニュ」は、いずれも長音を含む5音よりなり、一連に称呼した場合に、比較的聴別されにくい中間部において「タ」の音と「テ」の音の差異を有するが、この差異音は子音を共通にし、母音である「a」と「e」の音も近似しているから、両称呼を一連に称呼した場合、称呼全体の語調、語感が著しく近似したものとなる。したがって、本件商標と引用商標は、称呼において相紛らわしい。
・よって、本件商標と引用商標は観念において比較できないものの、外観及び称呼は相紛らわしいものであり、そして、当該需要者である一般の消費者が通常有する注意力を踏まえると、これらの一般の消費者が必ずしも商標の構成を細部にわたって記憶して取引するとはいえず、本件商標と引用商標を時と所を異にして隔離的に観察した場合、商品の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるから、本件商標は、引用商標に類似する商標である。

【キーワード】 外観類似、称呼類似

 

● 知財高判平29・11・28 平成29年(行ケ)10141 2部 一部無効成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10141

【判決要旨】
・本件商標と引用商標1及び3、そして、引用商標2の要部と認められる図形部分とを比較すると、これらは、いずれも、円状輪郭、円状輪郭内の上部に配された二つの小さい黒塗りの縦長楕円形、その下方に配した両端上がりの弧線を基本的な構成要素とし、これらによって、円形の顔に目と口を有する人の笑顔を、簡潔、かつ、象徴的に描写したものと看取される点において外観的な印象を共通にするから、場所と時間を異にした離隔的観察において類似する。細部において相違する点があることは、この判断を左右するものではない。
・よって、本件商標と引用各商標は、類似する商標である。

【キーワード】 外観類似

 

● 知財高判平29・10・26 平成29年(行ケ)10128 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10128

【判決要旨】
・本件商標は、「軽スタ」という漢字1字と片仮名2字を結合した構成の標準文字からなり、外観上、一体的に看取、把握される。引用商標は、「軽スタジオ」という漢字1字と片仮名4字を横書きした構成からなるが、これらの文字は、同一の書体、同一の大きさ、同一の間隔で表されており、外観上、一体的に看取、把握される。したがって、本件商標と引用商標の外観は、「軽スタ」という文字部分が共通であるものの、本件商標が3字であるのに対し、引用商標は5字であり、離隔的観察においても、外観上の相違を十分認識することができる。
・本件商標からは、その構成文字に応じて、「ケイスタ」の称呼を生じ、この称呼は4音と短いことから、一気に称呼し得る。引用商標からは、その構成文字に応じて、「ケイスタジオ」の称呼を生じ、この称呼は6音であることから、一気に称呼し得る。したがって、本件商標と引用商標の称呼は、「ケイスタ」が共通であるものの、本件商標が4音であるのに対し、引用商標は6音である上、差異音である「ジオ」は、濁音を含む明瞭に発音されるから、離隔的観察においても、称呼上の相違を十分認識することができる。
・本件商標は、辞書等に載っていない造語であるから、直ちに特定の観念を生じない。また、本件商標に接した本件商標の指定役務の需要者は、本件商標が軽自動車と「スタ」から始まる何らかの単語を組み合わせたものの略称と考えられることまでを想起するとしても、本件商標全体から特定の観念を想起することはできない。引用商標の「スタジオ」は、引用商標の指定役務と直ちに結びつくものではないが、「軽自動車」の略称である「軽」と結合して用いられていることから、引用商標全体からは、「軽自動車に関する役務の提供が受けられる場所」といった観念を想起する。したがって、本件商標と引用商標とは、観念が共通するものではない。
・よって、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、観念が共通するものでもないから、これらを総合して判断すると、本件商標は、引用商標に類似する商標に当たらない。

【キーワード】 外観非類似、称呼非類似、観念非類似

 

● 知財高判平29・10・25 平成29年(行ケ)10053 1部 無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10053

【判決要旨】
・本件商標と引用商標1,2は、「チドリヤ」の称呼が生じ、称呼において同一である。
・本件商標と引用商標1,2の外観は同一ではないが、同一語の漢字表記と片仮名表記又はローマ字表記が併用されることが多く見られる事情があることから、文字種が異なることは、本件商標と引用商標1,2が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではない。
・本件商標の登録査定時において、「千鳥屋」という屋号及び商号が全国的にその名を知られており、また、引用商標1,2は、「千鳥屋」の称呼を片仮名又はローマ字で表記したものといえることからすると、本件商標と同様に、引用商標1,2から「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じる。
・よって、本件商標と引用商標1,2は、称呼において同一であり、両商標からは同一の観念を生じるから、本件指定商品の需要者にとって、引用商標1,2と同一の称呼を生じる本件商標を付した商品を、引用商標1,2を付した商品と誤認混同するおそれがある。

【キーワード】 称呼同一、観念同一

 

● 知財高判平29・2・8 平成28年(行ケ)10177 3部 拒絶審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10177

【判決要旨】
・本願商標からは、「エトライク」の称呼のほかに、「イートライク」の称呼も生じるから、本願商標と引用商標1は、称呼が同一である。
・本願商標と引用商標1は、文字の種類が異なる点で外観が異なるが、外観上の差異として強い印象を与えるものではない。
・本願商標と引用商標1からは、一般に認知されている特定の観念は生じない。
・よって、本願商標と引用商標1は、「イートライク」の称呼を共通にする一方、その外観において、称呼の共通性を凌駕するほどの顕著な差異があるとはいえず、また、観念においても相違があるものではないから、互いに相紛れるおそれのある類似する商標である。

【キーワード】 称呼同一

平成28年(行ケ)10177

【判決要旨】
・引用商標2からは、「イートライク」の称呼が生じるから、本願商標と引用商標2は、称呼が同一である。
・本願商標と引用商標2は、大文字、小文字の使い方や書体が相違するが、格別顕著な相違ではなく、外観上近似した印象を与える。
・本願商標と引用商標2からは、一般に認知されている特定の観念は生じない。
・よって、本願商標と引用商標2は、「イートライク」の称呼を共通にする上、その外観においても近似した印象を与えるものであり、また、観念においても相違があるものではないから、互いに相紛れるおそれのある類似する商標である。

【キーワード】 称呼同一

 

● 知財高判平28・4・12 平成27年(行ケ)10219 3部 無効成立審決→審決取消

平成27年(行ケ)10219

【判決要旨】
・本件商標は、外観視覚上、まとまりよく一体に表わされ、その称呼は冗長なものではなく、無理なく一連のものとして称呼し得るものであり、かつ、人物名を想起させる。引用商標1及び2は、その構成全体から「フランクミュラー」との称呼が自然に生じる。引用商標3は、その構成全体から「フランクミュラーレボリューション」との称呼が自然に生じるが、「FRANCK MULLER」の部分は,周知の被告使用商標と同一の構成であるから、引用商標3からは「フランクミュラー」との称呼も生じる。そして、本件商標と引用商標1~3を対比すると、第5音目以降において、「ミ」及び「ラ」の音は共通すること、両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にする近似音である上に、いずれも構成全体の中間の位置にあるから、聴者は差異音「ウ」、「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう可能性が高いこと、引用商標1~3の称呼中の語尾の長音は、語尾に位置するものである上に、その前音である「ラ」の音に吸収されやすいものであるから、長音を有するか否かの相違は、明瞭に聴取することが困難であることに照らすと、両商標を一連に称呼するときは、全体の語感、語調が近似した紛らわしいものであるから、本件商標と引用商標1~3は、称呼において類似する。
・本件商標と引用商標1~3は、その外観において明確に区別できる。
・本件商標からは、「フランク三浦」との名ないしは名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し、引用商標1~3からは、外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから、両者は観念において大きく相違する。
・本件商標及び引用商標1~3の指定商品において、専ら商標の称呼のみによって商標を識別し、商品の出所が判別される実情はない。
・よって、本件商標と引用商標1~3は、称呼においては類似するものの、外観において明確に区別でき、観念においても大きく異なる上に、本件商標及び引用商標1~3の指定商品において、商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るともいえないから、本件商標及び引用商標1~3が同一又は類似の商品に使用されたとしても、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはなく、本件商標は引用商標1~3に類似しない。

【キーワード】 引用商標の周知性、外観非類似、観念非類似、取引の実情

 

● 知財高判平28・3・23 平成27年(行ケ)10172~4 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10172~4

【判決要旨】
・本件商標1~3は、まとまりよく一体的に表され、外観上、一体のものであり、「チャッカボー」の称呼を生ずる。引用商標1,2は、一文字弱程度の空白を擁するが、まとまりよく一体的に表され、外観上、一体のものであり、「チャッカマン」の称呼を生ずる。両者は、「チャッカ」の称呼は共通するものの、「ボー」と「マン」とは著しく音質、音感を相違し、全体として称呼するときに、両者を聞き誤るおそれはないから、本件商標1~3と引用商標1,2とは、称呼上、類似しない。
・本件商標1は、片仮名と漢字混じりの文字であり、本件商標2は、色分けされた組み合わせた片仮名の文字であって、「ボー」部分に図形が取り込まれているのに対し、引用商標1は、片仮名の文字であり、引用商標2は、欧文字であるから、外観上、明らかに区別でき、本件商標1,2と引用商標1,2とは、外観上、類似しない。本件商標3と引用商標1とは、比較的短い文字数からなるにもかかわらず、語尾側の2文字が異なるから、相紛らわしいとはいえず、外観上、類似しない。本件商標3は、片仮名の文字であるのに対し、引用商標2は、欧文字であるから、外観上、明らかに区別でき、本件商標3と引用商標2とは、外観上、類似しない。
・本件商標1は、「火をつける棒」との観念を生じるのに対し、引用商標1,2は、「火をつける人、男性」との観念を生じるから、火をつけるという前提で共通するものの、本件商標1は、客体である道具を指し、引用商標1,2は、主体である人(擬人化)を指すから、観念において相紛れることはなく、本件商標1と引用商標1,2とは、観念上、類似しない。本件商標2,3は、特定の意味合いを想起させない造語であるから、引用商標1,2と観念において相紛れることはなく、本件商標2,3と引用商標1,2とは、観念上、類似しない。
・よって、本件商標1~3と引用商標1,2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似せず、非類似の商標である。

【キーワード】 称呼非類似、外観非類似、観念非類似

 

● 知財高判平28・3・16 平成27年(行ケ)10193,4 4部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10193,4

【判決要旨】
・本願商標1,2から、一般的な英語の発音方法に従って「コールマン」との称呼が生じることは、当事者間に争いがないところ、本願商標1,2及び引用商標は、同一の称呼が生じる。
・本願商標1,2が、アウトドア・キャンプ用品の業界において著名になったのみならず、日用品の取引者、需要者の間でも著名な商標として周知されるに至っていることに鑑みれば、原告が経営を多角化して時計の分野にも進出してきたものと捉え、原告の商品として認識するということができるから、本願商標1,2からは、原告のブランドとの観念が生じる。またそのため、引用商標からも、原告のブランドとの観念が生じる。
・本願商標1,2と引用商標の外観は、類似するとはいえない。しかし、本願商標1中の「Coleman」は、本願商標1全体の面積の大半を占めており、他の部分に比して際立った印象を与えることに鑑みると、本願商標1と引用商標の各外観の差異は、称呼及び観念の同一性をしのぐほどのものではない。本願商標2と引用商標の外観の差異も、称呼及び観念の同一性をしのぐほどのものではない。
・よって、本願商標1,2と引用商標は、出所につき誤認混同を生ずるおそれがあり、両商標は類似する。

【キーワード】 取引の実情、本願商標の周知性、称呼同一、観念同一

 

● 知財高判平27・9・29 平成27年(行ケ)10064 2部 拒絶審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10064

【判決要旨】
・両商標は、外観において、相違する。
・しかし、本願商標を「猫砂」と称される商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、商品の原材料の一つとして用いられている「紙」の語、格助詞の「の」及び商品の性状を比喩的に表した「砂」の語を容易に連想、想起し、その構成全体をもって、「紙の砂」の日本語の音を欧文字を用いてローマ字表記してなるものと理解、認識するから、本願商標は、引用商標との比較において、「カミノスナ」の称呼を同一とし、「紙の砂」の意味合いを認識させる点においても共通する。
・よって、本願商標と引用商標とは、外観においては相違するものの、「カミノスナ」の称呼及び「紙の砂」の意味合いにおいて同一であるから、これらを総合勘案すれば、両商標をそれぞれ同一又は類似する商品に使用したときは、その商品の出所について相紛れるおそれがある。

【キーワード】 称呼同一、観念同一

 

● 知財高判平27・6・11 平成26年(行ケ)10264 4部 無効不成立審決→請求棄却

平成26年(行ケ)10264

【判決要旨】
・「RUNE」の意味を知る取引者、需要者はもとより、意味を知らない取引者、需要者においても、我が国における英語の普及率や使用頻度が非常に高いことに照らせば、「RUNE」との欧文字を無理なく英語風の読み方で発音することが多いと考えられるから、本件商標からは「ルーン」との称呼が生じ得るが、「RUNE」との欧文字をローマ字読みすれば、「ルネ」と発音されるから、本件商標からは「ルネ」の称呼も生じ得る。他方、「René」とのフランス語単語を知らない取引者、需要者においては、これを無理なくフランス語の読み方で発音するとは考え難く、これを英語風又はローマ字読みで発音するものと考えられるから、本件商標からは「レネ」との称呼も生じ得るが、「René」の意味を知る取引者、需要者は、「René」との欧文字を無理なくフランス語の読み方で発音すると考えられるから、引用商標からは「ルネ」との称呼が生じ得る。したがって、本件商標と引用商標とは、いずれも「ルネ」の称呼を生じる場合がある点では共通である。
・「RUNE」は、英語では「①ルーン文字、北欧古代文字、②神秘的な記号」等の意味を有する名詞であるが、かかる英単語が我が国において一般的に知られた語であるとまではいえないから、必ずしも本件商標から特段の観念が生じない。他方、「René」とのフランス語単語を知らない取引者、需要者においては、引用商標から特段の観念を生じないが、「René」は、フランス語では「ルネ(男の名)」の意味を有する名詞であり、これを知る取引者、需要者においては、引用商標から「ルネなる男の名」との観念が生じる。したがって、本件商標と引用商標とは、観念において類似しない。
・外観については、本件商標と引用商標とが、ともに欧文字4文字を横一行に書してなり、語頭が「R」(大文字)から始まる点で共通するが、これに続く3文字は、本件商標では「UNE」であるのに対し、引用商標では「ené」であって、本件商標が全て大文字で表記されているのに対し、引用商標では全て小文字で表記され、かつ、末尾の「e」の上にはアクセント記号が付されている点で相違しており、本件商標と引用商標とは、外観上明確に相違する。
・本件商標と引用商標とで共通する指定商品である「布製身の回り品」、「被服」及び「履物」の取引においては、取引者、需要者は、店頭販売、通信販売及びインターネットを介した販売において、商品の外観を見て購入するのが通常であり、その際に、商品、値札、カタログ、商品情報等に付された商標の外観や製造販売元を見て商品の出所について相応の注意を払って購入することが多いと考えられ、取引者、需要者が商標の称呼のみをもって商品の出所を識別して商品を購入するとは考えにくい。
・よって、本件商標と引用商標とは、「ルネ」との称呼が同一である場合が生ずるものの、外観上明確に相違するものであること、観念において類似するとはいえないこと、取引の実情を踏まえると、取引者、需要者が商品の出所を誤認混同するおそれはなく、本件商標は引用商標と類似する商標ではない。

【キーワード】 外観非類似、観念非類似、取引の実情