商標法4条1項15号

[作成・更新日:2018.6.20]

 商標法4条1項15号は、商標登録を受けることができないものとして、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)」を規定しています。
 ここでは、商標法4条1項15号が争点となった審決取消訴訟の判決を紹介します(※ 判決は適宜追加更新していきます。)。

<参考>商標審査基準(第4条第1項第15号)

 

● 知財高判平30・6・12 平成29年(行ケ)10214 1部 無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10214

【判決要旨】
・本件商標と引用商標の外観とを対比すると、i)いずれも8文字の欧文字からなり、語頭の「G」と語尾の5文字「ZILLA」を共通にするものであり、ii)2文字目において、本件商標は「U」からなるのに対し、引用商標は「O」からなるが、本件商標において「U」と3文字目の「Z」の上端は結合し、やや縦長の太文字で表されているから、見誤るおそれがあり、iii)3文字目において相違するが、本件商標はデザイン化され、全体的に外観上まとまりよく表されていることから、本件商標と引用商標とは、外観において相紛らわしい点を含む。
・本件商標と引用商標の称呼を対比すると、i)語頭音を除く称呼は「ジラ」と共通し、ii)語頭音は、本件商標は「グ」と「ガ」の中間音として、引用商標は「ゴ」と「ガ」の中間音として、それぞれ称呼され得るが、「グ」と「ガ」の中間音と、「ゴ」と「ガ」の中間音とは、いずれも子音を共通にし、母音も近似することから、本件商標と引用商標とは、称呼において相紛らわしい。
・引用商標は周知著名であって、その独創性の程度も高い。
・本件指定商品に含まれる商品の中には、原告の業務に係る商品と比較した場合、性質、用途又は目的において一定の関連性を有するものが含まれている。
・本件指定商品の取引者及び需要者の中には、原告の業務に係る商品の取引者及び需要者と共通する者が含まれ、そして、商品の性質、用途又は目的からすれば、これら共通する取引者及び需要者は、商品の性能や品質のみを重視するということはできず、商品に付された商標に表れる業務上の信用をも考慮して取引を行うものである。
・そうすると、本件指定商品に含まれる専門的・職業的な分野において使用される機械器具と、原告の業務にかかる商品との関連性の程度は高くないものの、本件指定商品に含まれる商品の中には、本件商標を使用したときに、当該商品が原告又は原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるものが含まれるといわざるを得ない。
・よって、本件商標は商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 称呼類似、外観類似、引用商標の周知著名性、取引の実情

 

● 知財高判平29・12・25 平成29年(行ケ)10080 1部 無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10080

【判決要旨】
・本件商標と引用商標とを直接対比した場合、背景図形が異なる点、雄牛の配置が異なる点、雄牛の姿勢が異なる点で、それぞれ差異を有する。しかしながら、本件商標及び引用商標の全体的な構図をみると、本件商標と引用商標とは、いずれも、黄色系暖色調の無地の背景図形の前に、左向きに描かれて角を突き出した赤色の躍動感のある姿勢をした雄牛の図形が配置されるなどの基本的構成をほぼ共通にし、さらに、雄牛自体の図形の構成上、2本の角を突き出し、前脚を内向きに曲げ、後脚を突き出して、尾を略S字状になびかせた左向きの赤色の雄牛といった様々な一致点を有していることに照らすと、外観上、互いに紛れやすいものである。
・しかも、本件商標からは跳躍する赤い雄牛との観念が生じ、引用商標からも突進する赤い雄牛との観念が生じるから、本件商標と引用商標は、観念においても、ほぼ同一(又は類似)である。
・したがって、本件商標は、引用商標と比較的高い類似性を示す。
・引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、レッドブル社の業務に係るエナジードリンク(飲料)の商品分野のみならず、自動車関連の商品分野において、自動車に関連する商品の取引者、需要者の間に広く認識されており、その著名性は高く、その状態が現在においても継続している。
・本件商標の指定商品は、自動車用品関連の商品を含むから、引用商標の著名性が取引者、需要者に認識されている分野である自動車に関連する商品等と関連性を有する。
・本件商標が使用される商品の主たる需要者は、自動車の愛好家を始めとして、自動車の所有者や利用者など広く一般の消費者を含むが、一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らない。
・そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、著名商標である引用商標を連想、想起して、当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがある。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 外観類似、観念類似、引用商標の周知著名性、取引の実情

 

● 知財高判平29・11・14 平成29年(行ケ)10109 4部 無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10109

【判決要旨】
・本件商標と引用商標は、外観において極めて類似し、共に「男性の集まりないし同好会」という観念を生じさせ、称呼は「メンズクラブ」であって、共通するから、本件商標と引用商標は、商品の出所の誤認混同を生ずるおそれのある極めて類似したものである。
・引用商標は、「MEN’S」「CLUB」という普通名称の組合せであって、その独創性の程度は、造語による商標に比して高いとはいえないが、本件雑誌は、昭和34年から「MEN’S CLUB」の誌名で現在まで継続して発行されているから、引用商標は、本件商標の登録出願の日前及び登録査定日はもとより、現在も需要者の間に広く認識されている。
・本件雑誌には、少なくとも最近約10年間にわたり、ほぼ毎号、化粧品についての記事が掲載されており、男性ファッション誌の主な対象は服飾品であるものの、化粧品はファッション全般に関するものとして、男性ファッション誌の対象とされているといえるから、男性化粧品と男性ファッション誌は、共にファッションに関するものとして少なからぬ関連性を有する。
・そうすると、本件雑誌と需要者が共通することその他需要者の注意力等を総合的に考慮すれば、本件商標を指定商品に使用した場合は、これに接した需要者に対し、引用商標を連想させて、当該商品が原告あるいは原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所につき誤認を生じさせるおそれがある。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たる。

【キーワード】 引用商標の周知著名性、取引の実情

 

● 知財高判平29・10・24 平成29年(行ケ)10094 4部 無効不成立審決→審決取消

平成29年(行ケ)10094

【判決要旨】
・本件商標の外観は、「豊岡柳」の漢字を上段に、「Toyooka」の欧文字を下段に書し、これらの文字の間には横線が引かれ、その構成中の「柳」の文字の一部が縦に長く伸びており、また、本件商標からは、「トヨオカヤナギ」との称呼を生じるのに対し、引用商標の外観は、「豊岡杞柳細工」の漢字を横書きしてなり、また、引用商標は、「トヨオカキリュウザイク」の称呼を生じるところ、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において類似するとはいえない。
・しかし、本件商標をその指定商品に使用した場合は、「兵庫県豊岡市の柳」という観念だけでなく、「兵庫県豊岡市で生産された柳細工を施した製品」という観念も生じ得るものである。そして、その場合には、本件商標の観念は、引用商標から生じる観念と類似する。
・引用商標の表示は、独創性が高いとはいえないものの、引用商標を付した原告商品は、原告の業務を示すものとして周知性を有しており、伝統的工芸品の指定を受け、引用商標が地域団体商標として登録されている。
・本件商標の指定商品は、原告商品と同一又は密接な関連性を有するもので、原告商品と取引者及び需要者が共通することその他被告の本件商標の使用態様及び需要者の注意力等を総合的に考慮すれば、本件商標を指定商品に使用した場合は、これに接した取引者及び需要者に対し、原告の業務に係る「豊岡杞柳細工」の表示を連想させて、当該商品が原告の構成員又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所につき誤認を生じさせるとともに、地域団体商標を取得し通商産業大臣から伝統的工芸品に指定された原告の表示の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 観念類似、引用商標の周知著名性

 

● 知財高判平29・9・13 平成28年(行ケ)10262 1部 無効不成立審決→審決取消

平成28年(行ケ)10262

【判決要旨】
・本件商標と引用商標とは、1)底部における曲線と直線の差異、2)白抜き部分の有無の差、3)曲線の傾斜の差、4)右上部の辺の傾斜方向の差、5)左上部の尖っているか丸まっているかの差の差異などを有することに加え、本件商標は、引用商標と比較して、平たい印象を受けることなどの差異を有しており、これらの差異、特に、2)の差異を考慮すると、本件商標と引用商標とを直接対比した場合の視覚的印象は別異のものということもできる。
・しかし、全体的な構図をみると、本件商標と引用商標は、いずれも、右上方に傾斜し、左上部分には右上方向に傾斜している直線があり、その傾斜直線の左端から鋭角に中央下部へ延びる曲線があり、また、傾斜直線の右端から鋭角に左下方向へ向かうとともに、弧を描きながら湾曲して右上がりに緩やかな曲線が延びており、その曲線の終点である右上部から中央部に向けて曲線が延びている構成を有しており、そして、上部の左端から右方向に延びる直線の傾斜角度及び湾曲した部分の下から右端に向かって上方に傾斜している曲線の傾斜角度は比較的類似していること、湾曲部の深さの比率や傾きの度合いも類似していること、左側部分における最も厚い部分の幅はほぼ同じであることなどの点において、本件商標と引用商標とは共通しており、本件商標の全体的な配置や輪郭等については、引用商標(特に上側部分)と比較的高い類似性を示している。
・引用商標は、原告の業務に係る商品などを表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、スポーツ用品に関連する商品の需要者の間に広く認識されていた。
・引用商標は、いわゆるワンポイントマークとして付されているものも多く、ワンポイントマークは、比較的小さいため、図形の輪郭全体が見る者の注意を惹き、内側における差異が目立たなくなるから、ワンポイントマークとして使用された場合などに、本件商標は、引用商標とより類似して認識される。
・また、本件商標の指定商品は、日常的に消費される性質の商品が含まれ、広く一般の消費者を含むが、一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれている。
・そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、著名商標である引用商標を連想、想起して、当該商品が原告又は原告との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがある。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 外観類似、引用商標の周知著名性、取引の実情

 

● 知財高判平29・7・27 平成29年(行ケ)10030 2部 無効成立審決→請求棄却

平成29年(行ケ)10030

【判決要旨】
・本件商標の「ORGANO」及び「SCIENCE」は、外観上分離して看取することができる上、「オルガノサイエンス」の称呼は、やや冗長であり、また、「ORGANO」の文字部分は、単独の言葉として用いられている事実はなく、我が国においてその意味が広く知られるに至っているものでもなく、さらに、「オルガノ」及び「ORGANO」が被告の略称又はハウスマークとして周知、著名であったことから、「ORGANO」は、被告の略称又はハウスマークを示す標記としての印象が強い。他方、「SCIENCE」の文字部分は、「科学」を意味する英単語として、社会に広く浸透した一般的な用語であって、その指定商品・指定役務に照らしても、さほど強い識別機能を有しない。したがって、「ORGANO」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部である。そうすると、本件商標の要部と使用商標1,2を比較すると、特定の観念は生じないことから、観念においては比較することはできないものの、使用商標1,2は、本件商標と「オルガノ」という呼称において一致し、使用商標1については、更に本件商標とは外観においても類似しているということができるので、本件商標と使用商標1,2は、類似する商標である。
・上述のとおり、使用商標1,2は、一定程度の独創性を有し、周知著名である。
・本件商標の指定商品等と被告の業務に係る商品等とは密接不可分に関連し、本件商標の指定商品等の取引者、需要者と被告の業務に係る商品等の取引者、需要者とは共通し、被告は多角経営を行っている。
・そうすると、本件商標の指定商品等の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標をその指定商品等に使用したときには、被告の商品等に係るものであると誤信され、また、広義の混同を生ずるおそれがある。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、使用商標の周知著名性

 

● 知財高判平29・1・24 平成28年(行ケ)10181 2部 無効成立審決→請求棄却

平成28年(行ケ)10181

【判決要旨】
・本件商標は、「オルガノ」と「サイエンス」の結合商標であるが、9字9音とやや冗長であり、また、「オルガノ」は「サイエンス」に比べれば一般にその意味合いが十分浸透しておらず、さらに、使用商標は、被告及び被告の事業ないし商品等を示すものとして周知著名となっているとともに、普及している語を用いたものではなく、一定程度の独創性を有することから、本件商標のうち「オルガノ」部分は、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。他方、「サイエンス」は、一般に知られている「科学」を意味し、指定商品である化合物、薬剤類との関係で、出所識別標識としての称呼、観念が生じにくい。したがって、本件商標については、「オルガノ」部分が要部である。そうすると、本件商標の要部「オルガノ」と使用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、一般には十分浸透しているとはいえないものの、いずれも「有機の」という観念を有しているから、両商標は類似している。
・上述のとおり、使用商標は、一定程度の独創性を有し、周知著名である。
・本件商標の指定商品等と被告の業務に係る商品等とは密接不可分に関連し、本件商標の指定商品等の取引者、需要者と被告の業務に係る商品等の取引者、需要者とは共通し、被告は多角経営を行っている。
・そうすると、本件商標の指定商品等の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標をその指定商品等に使用したときには、被告の商品等に係るものであると誤信され、また、広義の混同を生ずるおそれがある。
・よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、使用商標の周知著名性

 

● 知財高判平28・3・23 平成27年(行ケ)10172~4 2部 無効不成立審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10172~4

【判決要旨】
・本件商標1~3は、まとまりよく一体的に表され、外観上、一体のものであり、「チャッカボー」の称呼を生ずる。使用商標も、まとまりよく一体的に表され、外観上、一体のものであり、「チャッカマン」の称呼を生ずる。両者は、「チャッカ」の称呼は共通するものの、「ボー」と「マン」とは著しく音質、音感を相違し、全体として称呼するときに、両者を聞き誤るおそれはないから、本件商標1~3と使用商標とは、称呼上、類似しない。
・本件商標1は、片仮名と漢字混じりの文字であり、本件商標2は、色分けされた組み合わせた片仮名の文字であって、「ボー」部分に図形が取り込まれているのに対し、使用商標は、デザイン化された「チャッカマン」との片仮名の文字であるから、本件商標1,2と使用商標とは、外観上、類似しない。本件商標3と使用商標とは、比較的短い文字数からなるにもかかわらず、語尾側の2文字が異なり、さらに、使用商標の「チャッカ」がデザイン化された文字であるから、相紛らわしいとはいえず、外観上、類似しない。
・本件商標1は、「火をつける棒」との観念を生じるのに対し、使用商標は、「火をつける人、男性」との観念を生じるから、火をつけるという前提で共通するものの、本件商標1は、客体である道具を指し、使用商標は、主体である人(擬人化)を指すから、観念において相紛れることはなく、本件商標1と使用商標とは、観念上、類似しない。本件商標2,3は、特定の意味合いを想起させない造語であるから、使用商標と観念において相紛れることはなく、本件商標2,3と使用商標とは、観念上、類似しない。
・よって、本件商標1~3と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似せず、非類似の商標である。
・そして、本件商標1~3と使用商標とは、非類似の商標であるから、その需要者の注意力の程度や本件指定商品と原告商品との共通性を考慮しても、本件商標1~3が、出所混同のおそれがある商標であるとはいえない。
・よって、本件商標1~3は、商標法4条1項15号に該当しない。

【キーワード】 称呼非類似、外観非類似、観念非類似

 

● 知財高判平27・10・29 平成27年(行ケ)10073,4 2部 無効成立審決→請求棄却

平成27年(行ケ)10073,4

【判決要旨】
・引用商標の「酒」の部分は、普通名称として認識され、自他商品の出所識別力は乏しく、出所識別標識として支配的な印象を与えないのに対し、「養命」の部分は、「命を養う」との意味合いを生じさせ、「養命酒」が極めて著名なブランドとして通用していたことに照らすと、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。したがって、引用商標が、「養命」として著名性を獲得していないとしても、「養命酒」としてのみ観念されず、「養命」部分を基幹部分として認識される。
・本件商標1,2の「茶」、「青汁」との語は、単なる普通名称にすぎず、自他商品の出所識別力は乏しく、出所識別標識として支配的な印象を与えない。また、商品に付された商標の一部分だけによって簡略に呼称、観念することがある。したがって、本件商標1,2に接する取引者、需要者は、本件商標1,2の全体をもって取引に資するほか、「養命」の文字部分に着目することが少なくない。
・そうすると、本件商標1,2と引用商標とは、その基幹部分である「養命」において、外観上実質的に同一であり、称呼においても同一であり、「命を養う」との観念が生ずるから、ある程度類似している。
・そして、原告が本件商標1,2を指定商品に使用した場合、これに接した取引者、需要者は、極めて高い著名性を有する「養命酒」の表示を連想し、「養命茶」、「養命青汁」が、養命酒の姉妹商品として、被告の出所に係るものと誤認するか、あるいは、当該商品が被告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所につき誤認を生じさせる。
・よって、本件商標1,2は、商標法4条1項15号に該当する。

【キーワード】 要部観察、引用商標の周知著名性

 

● 知財高判平27・9・15 平成27年(行ケ)10025 2部 無効不成立審決→審決取消

平成27年(行ケ)10025

【判決要旨】
・本件商標を構成する「赤帽」の語以外の部分のうち、「京都」は、地名としての観念を生じ、「舞妓図形」及び「舞妓マークの」は、京都の「舞妓さん」を想起させるものの、原告の組合は京都府にも存在し、また、「赤帽」商標の周知著名性の程度の高さや、本件商標と「赤帽」商標とにおける役務の同一性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと、本件商標が指定役務に使用されたときは、その構成中の「赤帽」部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想できる。
・これに加え、上述のとおり、「赤帽」商標の周知著名性の程度が高く、しかも、本件商標の指定役務と「赤帽」商標の使用されている役務とが重複し、両者の取引者及び需要者も共通している。
・これらの事情を総合的に判断すれば、本件商標は、これに接した取引者及び需要者に対し「赤帽」商標を連想させて役務の出所につき誤認を生じさせる。
・よって、本件商標の登録は、商標法4条1項15号に違反してなされたものである。

【キーワード】 結合商標、分離観察・要部観察、使用商標の周知著名性