米国特許取得の流れ(フロー)

米国特許取得の流れ1米国特許取得の流れ2

 

1.特許出願/PCT国内移行

・出願に際し、明細書、クレーム、図面及び要約のほか、発明者の宣誓書(Declaration)が必要となります(35 U.S.C. 111)。
・従前は発明者が出願をしなければなりませんでしたが、2012年9月16日の法改正により、発明者からの譲受人も出願をすることができるようになりました(35 U.S.C. 118)。したがって、職務発明について、発明者が出願をした後、名義を会社に変更するといった従前の手続は不要となり、会社名義で出願をすることができるようになりました。
・日本の場合とクレームドラフティングの実務が異なるところがあります。米国出願時に修正するようにしてもよいのですが、基礎出願(日本出願)やPCT国際出願において、米国(や欧州、中国といった出願メジャー国)を意識してクレームドラフティングするというのも考え方の一つです。
・従属クレームの従属形式についても、日本と異なっており、米国では、多項制従属クレーム(いわゆる「マルチクレーム」)は認められますが、多項制従属クレームに従属する多項制従属クレーム(いわゆる「マルチのマルチクレーム」)は認められません。また、多項制従属クレームは認められますが、追加手数料が発生します(37 CFR 1.16(j))。そこで、米国では、独立クレームが3つまで、クレーム総数が20までは一律料金であることから(37 CFR 1.16(h),(i))、この範囲内でマルチ及びマルチのマルチを解消することになります。
・PCT国際出願の米国への移行については、PCTで規定されている国内移行(PCT22条、39条)のほか、継続出願による移行(バイパス出願)を選択することができます(35 U.S.C. 111(a)、37 CFR 1.53(b))。バイパス出願は、国内移行の場合よりも発明の単一性の基準が厳しくなる反面、PCT国際出願の逐語訳ではなく、米国用に補正した明細書及びクレームを提出できるなどの利点があります。
・米国への移行を含め出願は日本語でもすることができます(37 CFR 1.52(d))。その場合、出願後に受けた通知に指定された期間(通常2ヶ月以内(追加料金を支払うことで延長可能))に翻訳文を提出する必要があります(37 CFR 1.52(d)(1))。

2.出願公開

・米国も現在は出願公開制度を採用しており、出願は出願日(又は優先日)から18ヶ月後に公開されます(35 U.S.C. 122(b))。

3.限定要求(Restriction Requirement)/選択要求(Election Requirement)

・特許出願が2以上の発明を含んでいると判断される場合に、いずれか1の発明に限定するよう要求されます(37 CFR 1.142(a))。日本の単一性違反の拒絶理由に相当します。選択しなかった発明は審査の対象から外れることになりますので(37 CFR 1.142(b))、これについても権利化を図りたければ、分割出願(35 U.S.C. 121)をするのが一般的です。
・明細書に複数の実施形態が記載され、これら複数の実施形態を含むようなクレームを記載している場合に、特許出願が2以上の発明の種を含んでいるとして、いずれか1の種を選択するよう要求されることがあります(37 CFR 1.146)。例えば、クレーム1を実施形態1と実施形態2を包含する独立クレーム(属クレーム)、クレーム2を実施形態1についての従属クレーム、クレーム3を実施形態2についての従属クレームとした場合、実施形態1と実施形態2が異なる種であると判断されると、種の選択が要求されます。そして、クレーム1が拒絶された場合に、選択した種に対応するクレームについて審査が行われることになります。

4.実体審査、局指令(Office Action)/最終局指令(Final Office Action)、許可通知(Notice of Allowance)

・米国では、日本と異なり、審査請求制度は採用されていません。全件が審査対象となります。
・指定された審査官により、その出願が特許に値するか否か(特許要件があるか否か)が審査されます(35 U.S.C. 131)。その出願が特許に値しないと審査官が判断する場合、局指令が発行されます(35 U.S.C. 132(a))。一方、その出願が特許に値すると審査官が判断する場合、許可通知が発行されます(35 U.S.C. 131)。
・有用性(Utility、35 U.S.C. 101)、新規性(Novelty、35 U.S.C. 102)、非自明性(Non-obviousness、35 U.S.C. 103)といった特許性、及び、記述要件(Written Description Requirement)、実施可能要件(Enablement Requirement)、ベストモード要件(Best Mode Requirement)といった明細書の開示要件(Disclosure Requirement、35 U.S.C. 112)について実体審査が行われるところ、局指令には、特許性に関する拒絶(Rejection)と形式上の不備に対する拒絶(Objection)の2種類があります。局指令は、日本の拒絶理由通知に相当し、これに対し、出願人は、意見書や補正書を提出して反論することができます。
・審査官が局指令に対する意見書等を判断した結果、拒絶が解消されていないと判断した場合、又は出願人が提出した補正により、新たな拒絶が必要となった場合に、最終局指令が発行されます(37 CFR 1.113)。最終局指令は、日本の最後の拒絶理由通知に相当し、クレームを補正できる範囲が制限されます。

5.アドバイザリー・アクション(Advisory Action)

・最終局指令への対応によっても、審査官が特許許可できないと判断した場合、アドバイザリー・アクションが発行されます。
・アドバイザリー・アクションを受けたまま、最終局指令が発行された日から6ヶ月を経過した場合は、出願を放棄したことになるため、出願の係属を望む場合には、最終局指令が発行された日から6ヶ月以内に継続審査請求又は審判請求を行う必要があります。

6.継続審査請求(RCE:Request for Continued Examination)

・継続審査請求とは、最終局指令を受けた場合に、審判請求をせず、審査の再開を請求する手続をいいます(35 U.S.C. 132(b)、37 CFR 1.114)。

7.審判請求(Appeal)

・審判請求とは、審査官の判断を不服として審判部に対し、その判断の撤回を求め、再検討を請求する手続をいいます(35 U.S.C. 134)。審判は、現在のクレームに基づく審査官の判断の撤回を求める手続であるため、クレームを補正して対応したい場合は、継続審査請求を請求することになります。

8.特許料納付、特許発行、特許公報発行

・許可通知を受けると、特許料を納付することで特許が発行され、特許公報が発行されます。

9.その他

情報開示陳述書(Information Disclosure Statement)
・特許出願人は、特許性に関する重要情報(基礎出願や関連外国出願に対する拒絶理由で引用された先行技術文献、サーチレポートに挙げられた先行技術文献など)を記載した情報開示陳述書を提出しなければなりません(37 CFR 1.56,1.97,1.98)。この情報開示義務は、出願時だけでなく特許が発行されるまで提出する義務があります。
・情報を意図的に開示しないなどの情報開示義務違反は不公正行為であり、権利行使ができなくなる可能性があります(37 CFR 1.56)。

先願主義への移行
 米国は、他の国が採用する先願主義ではなく、先発明主義を採用していましたが、2012年9月16日の法改正により、先願主義へ移行しました。ただし、グレースピリオド(Grace Period、35 U.S.C. 102(b))は維持されており、純粋な先願主義ではないといわれています。

参考)
・ 米国特許法 - 合衆国法典第 35 巻(35 U.S.C.:Title 35 of the United States Code)参照仮訳
・ 米国特許法施行規則 - 連邦規則集第 37 巻(37 CFR:Title 37 of the Code of Federal Regulations)参照仮訳
・ 特許審査手続便覧(MPEP:Manual of Patent Examining Procedures)
  (600章の参照仮訳)(700章の参照仮訳
  (1500章の参照仮訳)(2100章の参照仮訳